久保建英、マンU戦歴史的勝利の立役者に。指揮官の采配で水を得た魚となった (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by ZUMA Press/AFLO

決勝点を生んだ久保のプレー

 そこで水を得た魚になったのが、久保だった。

 52分、左に流れた久保はボールを受けると、アーリークロスを長身のセルロートの頭にピンポイントで合わせる。シュートは枠に飛ばなかったものの、これでチーム全体が攻勢に転じることになった。54分には、後半から右サイドバックに回っていたスウェーデン代表ビクトル・リンデロフと1対1になると、久保は相手を手玉に取っている。わずかに下がって、1対2になりそうな気配でわざと食いつかせ、一気に縦を抜いて、再びセルロートへ際どいクロスを送った。マンチェスター・ユナイテッドのディフェンス陣に後ろ向きの守備を余儀なくさせている。

 56分、そのプレーで得たCKのショートコーナーからだった。ダビド・シルバからのパスを右サイドで受けた久保は、立ちはだかったブラジル代表フレッジを一瞬のフェイントで置き去りにし、縦に切り込み、マイナスのクロス。これをエリア内、フリーで受けたダビド・シルバが左足で蹴り込むと、飛び込んできた選手の手に当たってハンドになった。このPKをブライス・メンデスが左足で流し込み、決勝点になっている。

「久保は輝かしいふたつのプレーの後、CKからの流れでも主役となり、ダビド・シルバをフリーにしていた」

「アス」紙がそう絶賛しているように、「試合を決めた選手」と言えるだろう。

 もっとも、この日の勝利の最大の功労者はアルグアシル監督だろう。マンチェスター・ユナイテッドのエリック・テン・ハーグ監督の采配がことごく裏目に出たこともあったが、選手の質やキャラクターを見極め、戦況を見通し、選手をピッチに送り込む選択は秀逸だった。

 リードした後も抜かりはなかった。64分、ダビド・シルバが下がった後はシステムを4-3-3に変更。久保を左アタッカーで使い、時計の針を進めた。77分、アンデル・バレネチェアを久保と交代で投入するなど、相手のパワーをいなしながら逃げ切った。

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