久保建英は黄金コンビでマンUに挑む。日本人選手出場のヨーロッパリーグ見どころ (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

ELの舞台で殻を破れるか

 久保の途中出場は合格点だった。

 ダビド・シルバとの交代で、初めてトップ下としてプレーした。ライン間に入り、あるいはサイドに流れてボールを引き出し、的確にパスを流し入れた。とりわけ、移籍期限ぎりぎりで入団したナイジェリア代表、ウマル・サディクにダブルタッチで出したスルーパスは芸術的だった。寄せてきたスペイン代表MFコケを翻弄。サディクのゴールはオフサイドで取り消されたが、魔法的プレーで観衆を沸かせた。

 守備面でも貢献していた。アトレティコのMFジョフレイ・コンドグビアを封じ、攻撃を分断。プレスバックでうしろからボールを突き出したシーンでは、押し込まれかけていただけに危機を防いだと言える。

 久保はダビド・シルバの代役としても働けることを証明した。ボールも集まっていて、信頼を得ているのだろう。セットプレーも任され、右CKでは左足で直接狙ってファーポストをかすめた。

 EL開幕戦の焦点は、レアル・ソシエダがユナイテッドを相手にどこまでボールを握って、攻める時間を増やせるか、になるだろう。受けに回ると、ブルーノ・フェルナンデスなど強力な攻撃陣に蹂躙される。ボールを動かし、主体的にゲームを進められる点では上回るだけに、どこまで怯まずに戦えるか。

「舞台慣れ」

 その点では、スペイン代表やマンチェスター・シティでタイトルを勝ち取ってきたダビド・シルバがキーマンになるだろう。アトレティコ戦も、サディクのゴールの起点になった。彼にボールが入ることで、プレーの渦が起き、相手を飲み込むことができる。

 久保はチーム内で、そのダビド・シルバと最も調和を感じさせる。左利き同士、世界観が交わる。サッカー漫画のようなゴールデンコンビを形成しつつあるのだ。

「この夏は、ずっとシュート練習をしていた」

 開幕戦でゴールを決めた久保は語っていたが、覚醒の予感がある。18歳で一気にスターダムを駆け上がった後も成長を続けてきたが、ややその速度が落ちていた。それだけにELの舞台で、もうひとつ殻を破れるか。

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