マイケル・オーウェン、クリスティアン・ヴィエリ、そして審判界のヒーローとヒールはいま

  • 利根川晶子●文 text by Tonegawa Akiko
  • 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

最近もまたイタリア人を激怒させた

 決勝トーナメント1回戦のイタリア対韓国。トッティにイエロー2枚を出して退場にし、イタリアのゴールをオフサイドとして取り消す一方、韓国のファウルはほとんど見逃してイタリアを敗退に追い込んだ。イタリアでは親の仇のように憎まれている。

 イタリアのレジェンド、マルディーニは以前からこの大会で引退することを決めていたが、最後がこんな形に終わったことに、悔恨の念があるようだ。

「ひどいスキャンダルだ。私は常にピッチで礼儀正しく振る舞う努力をしてきたが、こうした不正に黙るのは正しくない。代表でのキャリアをこんな形で終えたくはなかった」

 デル・ピエロはイタリアの新聞に、当時のことを振り返りこう言っている。

「モレノという名前を聞くと、もう笑うしかない」

 MFアンジェロ・ディ・リービオは、モレノのことを「自分の人生から消し去りたい人物」だという。「たまに人から、『あの時どうしてあいつを殴らなかったんだ?』と聞かれるんだ。今考えると、あの時、俺は34歳で、先も長くなかったから、殴ってもよかったのかもしれない」

 日韓W杯の数カ月後、モレノは、今度はエクアドルのリーグ戦バルセロナ対リーガ・キトで故意に試合を操ったとして非難される。キトは90分まで3-2で負けていたが、モレノは6分のアディショナルタイムを提示し、PKをキトに与え、キトのファウルは一切取らず、既定の6分が過ぎても笛を吹かず、キトがやっと逆転したタイミングでタイムアップとした。その時、すでにアディショナルタイムは13分になっていた。

 ちなみにモレノはその後、キトの市議会選に立候補する。彼がその時掲げたスローガンが「不正にはレッドカード」だった。

 度重なる誤審に、何度か資格停止処分を受けた後、2003年に審判を引退。この年イタリアのバラエティ番組「おばかホテル」に出演。番組のミニドラマのなかで、モレノはアタッシュケースにあふれるほどの札束を詰め込み、美女をはべらせてダンスまで披露する。八百長で儲けた億万長者の役柄だった。

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