日本代表にとってはニュージーランドよりくみしやすい。W杯第2戦の相手コスタリカの実力 (2ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

「最後の最後まで」ハラハラ

 チームを率いるコロンビア人監督、ルイス・フェルナンデス・スアレスは、小国をW杯に連れて行くのがうまい。2006年にはエクアドルを、2014年にはホンジュラスを率いてW杯で戦っている。試合後の彼のコメントはかなり正直なものだった。

「90分間、ずっとハラハラしどうしで、手の震えが止まらなかった。タイムアップの笛が鳴るまで息ができなかったよ。我々はずっと苦しんだ」

 実際、コスタリカのテレビ局の解説者はタイムアップの瞬間「我々は勝利した」とは言わず「我々は救われた」と叫んだ。思わず本音が出たのだろう。翌日の新聞の見出しも「最高の喜び、でもラッキーだったのは知ってる」「控えめな試合で、大きなものを勝ち取った」と、決してコスタリカが圧倒して勝ったのではないことを物語っている。

 苦労し、大きな不安の末に手に入れた勝利だからこそ、喜びは大きかった。

 コスタリカサッカー協会はスペイン語で「PURA VIDA EN QATAR 22」と書いた赤いシャツを用意していて、試合後、すべての選手に着せた。「PURA VIDA」は直訳すると「純粋な人生」。コスタリカは自然豊かで、美しい海も陽気な音楽もある。常設の軍隊を持たない国として知られており、ここではピュアな人生を送れるということを意味し、コスタリカでは挨拶のかわりにも、「大丈夫」の意味にも、「すばらしい」の意味にもなる言葉だ。このシャツを着て選手たちは、スタジアム中を駆け巡った。

 もうひとつ、コスタリカのスローガンとなっているのは「Anita mikilona」という言葉だ。コスタリカの先住民ブリブリ族の言葉で「最後の最後まで」を指す。確かにいろんな意味で「最後の最後まで」だった。

 試合はコスタリカの火曜日の正午に始まったが、この間は国中が止まっていた。この日、すべての学校は休みになり、大統領は「仕事もこの試合の3時間は休みにしていい」との宣言をした(最初は2時間のはずだったが、「延長PKになったらどうする」と言われて3時間に延ばした)。

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