スペイン代表は欧州でもトップのボール支配率で相手を圧倒。カタールW杯で日本代表につけ入る隙はあるか (3ページ目)

  • 髙橋智行●文 text by Takahashi Tomoyuki
  • photo by Getty Images

17歳のガビが大活躍

 ルイス・エンリケ監督は今大会でも平均8人を超えるターンオーバーを行なった。全試合にフル出場したのはGKのウナイ・シモンのみで、ガビとサラビアが最初から3試合連続で先発だった。

 そんななかでもスペインは、ボール支配率の高さを再びキープした。タレント揃いのポルトガル戦を含む全試合で相手を圧倒し、1試合平均68%を記録。ホームのチェコ戦は満員のすばらしい雰囲気のなか、手応えを感じさせる内容だった。

 だが、またもや決定力不足を解消できなかった。

 4試合を振り返ってみると、ボールをキープするもののほしいところでゴールを決められずに苦しんだ印象で、以前から続く大きな課題をクリアできていない。また最初の2試合で見られたように、DF陣が集中力を欠き失点したことが批判された。今後、少ない準備期間でどこまで改善できるかが2回目の優勝に向けた鍵となるだろう。

 個人に目を向けると、とくに注目すべきはネーションズリーグを通じて最も眩い光を放ったガビだろう。弱冠17歳にしてすでにチームを掌握して攻撃の起点となり、一番歓声の上がる選手になっている。

 昨年8月にバルセロナ史上4番目に早いリーガデビューを果たすと、同年10月にスペイン史上の最年少代表デビューを達成。その勢いはとどまることを知らず、今回アウェーのチェコ戦で同国代表史上の最年少得点記録を樹立した。

 サラビアも目覚ましい活躍を見せた選手のひとりだった。今季、出場機会を求めてパリ・サンジェルマンからスポルティングにレンタル移籍。クラブでの調子のよさを代表に還元して、昨夏のユーロ(欧州選手権)から8ゴールを決めてチーム得点王。直近5試合で4得点1アシストを記録し、現在、最もゴールに絡んでいる選手になっている。

 久々の代表復帰を果たしたアセンシオは、出場するたびに決定的な役割を果たしている。レアル・マドリードではとくに今季終盤、控えの立場が続いていたが、チェコとの2試合で2アシストを記録。そのパフォーマンスは決定力不足に悩むチームにとって朗報だ。ガビと並び今大会で最も評価された選手となり、ワールドカップ出場に向けて大きく前進している。

 そのほか、キャプテンを務めるブスケツは来月34歳の誕生日を迎えるが、そのパフォーマンスに陰りはない。ロドリ(マンチェスター・シティ)もいいプレーを見せているが、レギュラー争いでリードしていると思われる。

 GKのレギュラーは度々ファインセーブを披露しているウナイ・シモンで決まりと見られており、センターフォワードのスタメンはパフォーマンスの不安定さに賛否両論あるものの、モラタが濃厚である。

 スペインはこのあと、9月にネーションズリーグ・グループリーグ残り2試合でスイス、ポルトガルと対戦する。今はまだスペイン国内の雰囲気は全くワールドカップモードになっていないが、その頃には人々の関心も徐々にカタールW杯へと向いていくだろう。

 一方、長かったシーズンを終え、束の間の休暇を楽しんでいる選手たちは、来月からプレシーズンを開始し、あっという間に本番を迎えることになる。

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