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ミラン、11季ぶりVが目前。火の車の財政状態からどうして復活できたのか (2ページ目)

  • マルコ・パソット●文 text by Marco Pasotto
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

「このチームはモナリザ」

 今シーズンのミランはどんなチームか。攻撃面を見てみると、ミランのトップスコアラーは11ゴールのラファエル・レオンだ。現在リーグ得点王のチーロ・インモービレ(ラツィオ)はここまで27ゴール。レオンは得点ランキングでは16位になる。だが、別な見方をすると、ミランは実に16人の選手がゴールを決めている。ひとりの選手だけに頼っていない証であり、これは大きな長所である。

 一方、守備に目を向ければ、ヨーロッパナンバーワンと言ってもおかしくない。シーズン後半は18試合で9失点。これはチャンピオンズリーグ決勝に進出したリバプールとほぼ同じ記録だ。

「このチームはピオリのモナリザ、つまり一大傑作だ」

 かつて本田圭佑ともともにプレーしていた元ミランのキャプテン、リッカルド・モントリーヴォは言う。

「ピオリはチーム全員を巻き込むことに成功した。不満を持つ者はひとりもいない。これは監督にとって大きな成功を意味する。ピオリはセリエAで最も現代的な監督だ」

 ミランの黄金時代の礎を築いた元監督アリゴ・サッキも、ピオリの手腕を高く買うひとりだ。

「ミランは開幕時には優勝候補と見られることはなかった。にもかかわらずここまできたのはチーム力だ。発想と信念は、何億もの金よりも重要であることを、ピオリのミランは証明してみせた」

 優勝は目の前にして。選手たちにプレッシャーがかかり、それが不安となってのしかかることはない。なぜならミランはこの長いシーズンをかけて、自分たちの強さを十分に自覚してきたからだ。

「先週のアタランタ戦前日も、選手のモチベーションを高めるような言葉を特に吐く必要はなかった」と、ピオリ自身も認めている。

 ミランが復活したのは、アメリカの投資ファンド「エリオット・マネジメント」がチームのオーナー会社となったことも大きい。2020年、「エリオット」が中国人実業家のリー・ヨンホンからミランを受け継いだ時、ミランの財政は借金まみれの火の車だった。それを彼らはわずか2年半で健全化し、ミランをまたサッカーの表舞台に戻すという奇跡的な偉業を達成した。

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