「『鎌田はできない』の声をやっと見返すことができた」。EL優勝で号泣の鎌田大地が赤裸々に語ったサッカー人生

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 ヨーロッパリーグ(EL)決勝、フランクフルト対レンジャーズは、フランクフルトがPK戦の末、優勝を果たした。

 勝てばフランクフルトは42年ぶり2度目、レンジャーズにとっては初の優勝となるだけに、試合前からサポーターはELとは思えないような熱を帯びていた。グラスゴーからは10万人、フランクフルトからは5万人がセビージャ入りしていると言われ、その数はスタジアムの収容人数約3万8000人を大きく超えており、チケットのないファンたちも大勢いた。

 彼らはパブリックビューイングやバルで歓喜の瞬間を待つしかないことを十分に理解しながら、いてもたってもいられずセビージャにやって来た。なかにはフランクフルトからバスを乗り継ぎ、丸2日かけてたどり着いたという猛者もおり、街はそんなファンで溢れていた。多くの店が通常営業ができないほどのお祭り状態になっていたフランクフルトでも、スタジアムでパブリックビューイングが行なわれたが、そのチケットを手に入れることができたのもわずかな人たちだった。

 試合は57分にレンジャーズがジョー・アリボのゴールで先制すると、その12分後にフランクフルトがサントス・ボレのシュートで追いつく展開となった。フランクフルトは、レンジャーズの徹底したロングボール攻撃と、鎌田大地らへの厳しいマンマークに苦しみ、延長、PK戦までもつれ込むこととなった。PK戦、フランクフルトは鎌田を含む全員が成功させ勝利を掴んだ。長谷部誠は予定では6人目のキッカーだったといい、「出番が来ないでくれと思っていた」と明かしている。

ヨーロッパリーグの優勝カップを手にしたフランクフルトの鎌田大地と長谷部誠ヨーロッパリーグの優勝カップを手にしたフランクフルトの鎌田大地と長谷部誠この記事に関連する写真を見る 優勝の瞬間、鎌田は人目を憚らずに号泣した。およそ感情を表に出すことがなく、日本でもドイツでも"食えないヤツ感"は変わらない鎌田だが、この優勝は特別なものだったという。

「本当に僕自身のキャリアで、中学・高校を合わせてもタイトルに近いところでプレーできてなかったし、タイトルを獲った時は自分が試合に出れていなかったり(2017-18シーズンのドイツ杯で優勝)だとか、初めてこういう試合に出てタイトルを獲れたというのは、すごく感慨深いです。今までのサッカー人生、なかなか難しい時ばかりを過ごしたので、頑張り続けてきたものが報われたんだなという、感慨深いものがありました」

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