バルサ戦で見えた光明。アギーレが久保建英を先発で起用しないのはなぜか (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 中島大介●撮影 photo by Nakashima Daisuke

アギーレは物足りなさを感じている

 攻撃に手数をかけず、フィジカル重視でとにかく持ち場を守り、相手を嫌がらせるようなプレーが増えた。必然的に、攻撃的な選手の起用は制限されることになった。バルサ戦は久保だけでなく、イ・ガンイン、サルバ・セビージャなどもベンチスタートになっている。

 つまり、久保は前監督の時代と比べて「厳しい状況に置かれた」と言える。

 アトレティコ戦で久保を途中投入して劇的な勝利に貢献した後、アギーレはこう語っていた。

「タケ(久保)は1週間を通じて先発組でプレーしてきた。しかし、何ひとつ気に入らなかった。"体温が低く"、無気力な感じで。いるべき場所がなかった。だが、今日ピッチに入った彼は熱意を見せ、プレーするに値した」

 アギーレは久保に期待する一方で、何か物足りなさを感じている。「何か」の正体は、インテンシティと言われるものか。それは攻撃の気迫も当てはまるが、特に守備の激しさなどに表れる。守備戦術を採用する場合、アギーレだけでなく、ビジャレアルのウナイ・エメリにせよ、日本代表の森保一監督にせよ、久保の起用をためらうところがあるだろう。

 守備ができないわけでもないが、守備を重視すると、他に屈強でパワーのある選手がいれば、結果としてオプション的起用になるのだ。久保としてはジレンマだろう。

 バルサ戦で久保は2トップの一角に入ると、広範に動いた。左サイドの崩しからエリア内に入ってパスを呼び込むと、左足でシュートまで持ち込んでいる。また、久保投入の約10分後にイ・ガンインも入ると、その連係からバルサを脅かすシーンが増えた。イからのパスを受け、中央から豪快に振ったシュートはブロックされたが、雰囲気は漂っていた。それまで、マジョルカはほとんど攻められなかったことを考えれば上出来で、好意的に見れば、相手を押し込んだことで1点につながった、とも言えた。

 事実、バルサ戦後の会見でアギーレは久保に及第点を与えている。

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