リバプールのマネvsサラーなど盛り上がる一方で、アフリカネーションズカップでは死者が出る悲劇もあった

  • ニック・エイムス●取材・文 text by Nick Ames
  • 井川洋一●翻訳 translation by Igawa Yoichi

【大国と小国の差が縮まっている】

 ピッチ上では、往々にして退屈なフットボールが展開されていた。ケガの可能性が危ぶまれるほど、芝生は劣悪なコンディションにあり、欧州でプレーするアーティストたちは、粗悪なキャンバスに筆を走らせることができずにいた。

 また優勝候補のひとつだったエジプトは、カルロス・ケイロス監督の慎重すぎる采配もあり、サラーほどの才能をも生かそうとせず、ほとんどの試合で得意のPK戦に持ち込もうとしているようだった。そんな彼らが決勝でPK戦の末に敗れたのは、皮肉にも思えるが。

 セネガルは初優勝に相応しいチームだった。FWマネ、MFイドリッサ・ゲイエ(パリ・サンジェルマン)、MFナンパリス・メンディ(レスター)、DFカリドゥ・クリバリ(ナポリ)、GKエドゥアール・メンディ(チェルシー)と、多くのポジションに欧州の強豪でプレーするタレントを揃え、彼らを束ねるのは現役時代に2002年日韓W杯で主将を務めたアリュー・シセだ。

 今年のカタールW杯でも彼らの勇姿を観たいところだが、出場権を得るにはプレーオフで再びエジプトを下さなければならない。つまり、マネかサラーのどちらかは、残念ながらW杯に出場できない。

 もっとも、今大会ではそうした大国とそれ以外の国の差が縮まっているのも確認できた。コモロ、ガンビア、赤道ギニア、シエラレオネらが、歴史的な強豪と伍する姿は、観ていて痛快だった。開催国の人々も、自国代表との試合を除き、彼らを応援していることが多かった。

 私たち記者やファンにとって、アフリカネーションズカップが難易度の高い大会であるのは間違いない。プレス席に電源をつなぐコンセントはほぼなく、開催地を結ぶフライトは少ない上に高額だった。またワクチン接種率が3%に満たないカメルーンで、その証明書がなければスタジアムに入れないルールがあり、多くの試合は実に少数の観衆のもとで行なわれていた。

 それでも、地元の人々はこの大会を存分に楽しんでいた。起きてしまった悲劇は、教訓にして、今後に生かされなければならないが。

 そして、最後にトロフィーを抱えて白い歯をこぼすマネの姿が、強く印象に残った。神父のもとに生まれ、苦労を重ねてトッププレーヤーとなり、目も眩むほどの大金を稼ぐようになった今も初心を忘れず、貧しい故郷に学校や病院を建てる心優しき男。そんな彼が代表の初タイトルを手にしたことを喜びたい。

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