本田圭佑、イタリアでの激動の日々。ミランが伝えたのは、サッカーへの真摯な姿勢 (4ページ目)

  • 利根川晶子●文 text by Tonegawa Akiko
  • photo by AFLO

【「企業家としても360度の視野を持つ」】

 ポッドキャストは、こんな本田の心情を紹介している。

「入団してから数年後に、本田は友人にこう漏らしている。『今やっと、ミランサポーターにとって背番号10がどんな意味を持つかがわかった。もっと前にわかっていたら、自分はこの番号を引き受けなかったろう。自分はチームのためにプレーし、走る選手であり、スターとして君臨する存在ではない』と」

 一方で、誰もが口をそろえて評価していたのは、本田の仕事に対する真摯な姿勢だ。最初に練習場に来て最後に帰っていく本田を、ミラン関係者の多くが目撃している。本田のチームに尽くす姿をこんなエピソードで紹介している。

「2015年1月、本田は日本代表の一員としてアジアカップをプレーしたが、日本が準々決勝で敗れると、彼はすぐミラネッロ(ミランの練習場)に飛んで帰った。この時、ミランは危機的な状況にあり、長い合宿が行なわれていた。本田は代表戦の直後なので合宿に参加する義務はなかったが、彼は例外扱いされるのを嫌った。『チームメイトがここにいるのなら、自分もここにいます』と言ってミラノの空港に降り立ち、家族に会う間もなくミラネッロにやってきた」

「プレーと練習にほとんどの時間を割いていた本田は、イタリア語を習う時間がなかった」と、ナレーションは言う。確かに本田はチームメイトと交流することが少なかった。また、イタリアのメディアに対して自分を語ることもほとんどなかった。それがミランでの日々をより難しいものにしてしまった可能性は高い。イタリアではふだんから自分の気持ちを自分の言葉で発信しておくことが大事なのだ。

 最後に、ポッドキャストは本田のさまざまな活動に言及している、

「企業家としても360度の視野を持つ。ピッチの中だけでなく、その外もよく見えていて、いつも新たなことに挑戦している」

 そしてナレーターはミランでの本田についてこう締めくくっている。

「プロフェッショナリズム、折り目の正しさ、常にベストを尽くす姿勢、微笑と寡黙さ、それがミランでの本田モードだった」

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