チェルシーの強さはなぜか。代表チーム的マネジメントを見せるトゥヘル監督の戦略的戦術

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

欧州サッカー最新戦術事情 
第5回:チェルシー

日々進化していく現代サッカーの戦術を、ヨーロッパの強豪チームの戦いを基に見ていく連載。第5回は、昨季CLで優勝し今季も好調のチェルシー。代表チーム的なマネジメントで成功しているトーマス・トゥヘル監督の手腕を紹介する。

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【トップクラブのなかでは戦術的に平凡】

 トーマス・トゥヘル監督の就任でチェルシーは変わった。

 昨シーズン、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)でマンチェスター・シティを下して優勝。プレミアリーグも4位まで浮上して今シーズンのCL出場権を獲得した。

 今年1月に就任してごく短期間で立て直した手腕は、見事というほかない。今季もプレミアリーグは、第18節終了時点でシティ、リバプールに次ぐ3位につけている。

 シティのジョゼップ・グアルディオラ、リバプールのユルゲン・クロップとともに現代を代表する監督のひとりであるトゥヘルだが、戦術的な尖り方はシティやリバプールほどではない。

 ポジショナルプレーを活用しているのはシティと同じだが、グアルディオラのチームのような流動性はない。チェルシーの3-4-2-1は、基本的に担当レーンの上下動がメインになっている。

 シームレスな攻守とプレッシングの苛烈さはリバプールと似ているが、こちらもリバプールほどの迫力は感じない。チェルシーもプレッシングは速く強力だが、クロップのチームが内包しているある種の狂気がないのだ。

 トゥヘルのチェルシーは十分先進的ではあるけれども、そのグループのなかではむしろ平凡な部類だろう。過去に率いたドルトムントでもパリ・サンジェルマンでもそうだった。この監督の強みはたぶんそこではないのだ。

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