久保建英への評価が、レアルに大敗&今季無得点でも下がらない理由 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 レアル・マドリード戦でバレンシアから移籍のイがゴールを決めたことは、エースになった久保にとっても朗報だろう。

 イは勝気さが裏目に出て、熱くなると我を失い、相手選手に明らかな反則行為をする幼さがある。また、プレー経験の少なさによるものか、レアル・マドリード戦でも前後半と不用意なバックパスでカウンターを浴びていた。ただ、攻撃に入った時の才能は傑出している。トップスピードでゴールに迫る卓越した技術を持ち、左足で仕留める力もある。

 久保にとっては、イを自らも輝くための飛び道具に使えるだろう。その呼吸がコンビネーションと言えるまでに高まったら、1部残留を目指すチームの切り札になるかもしれない。率直に言って、戦力的にえり好みできる余裕はない。

 前半の終盤、久保は腰を折って、苦悶の表情を見せるようになった。そして後半のピッチには立っていない。膝の違和感だったようで、やはり連戦のツケがたまったのだろうか。久保の離脱によって攻め手を欠き、戦況は厳しくなった。

 久保は東京五輪をフルで戦っている。マジョルカで再デビューした後も、帰国して代表戦に出場し、再びマジョルカへ。これだけ過密な日程を全力でこなすことには懸念があった。例えばバルサのスペイン代表MFペドリは、東京五輪を戦った後でリーグ戦を欠場しただけでなく、ワールドカップ予選も回避し、休養に努めたほどだ。

 久保は心身ともに際立って丈夫で、それこそ、彼の異能のひとつなのかもしれない。しかし、10、11月と続く日本代表戦をどうするかを含めて、最大限の力を出すためのベストな選択が望まれる。当然だが、欧州とアジアを往復する長旅だけでも消耗することになるのだ。

 もちろん今季開幕以来、久保が限界を突破するような戦闘意欲の高さを見せてきたのも事実だろう。その結果として、昇格したばかりのマジョルカはしぶとく勝ち点を積み重ねてきた。それが未だ自身は無得点にかかわらず、3年目のスペイン挑戦の評価が高い理由だ。

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