ルカクもレジェンドもCFに決まったスタイルなし。唯一の共通点は「大量に点をとること」 (3ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

 フリーデンライヒ、レオニダス、あるいはアルゼンチンリーグ最多得点者のアルセニオ・エリコ(パラグアイ)といった南米のストライカーは、高さもあったが敏捷で足技に優れていたようだ。イタリアのセリエA得点記録保持者、シルヴィオ・ピオラも弱点のない万能型だったという。

<サッカー史上、双璧のゴールゲッター>

 1950年代あたりまでは映像がほとんどないので、紹介した伝説的ストライカーは当時の記事や誰かの回想、あるいは得点記録そのものから、「何だかすごそうだ」と言うしかないわけだが、1950年代以降はある程度映像も残っている。

 圧巻なのは1960年代に活躍したエウゼビオ(ポルトガル)だ。ポジション的には4トップの10番なので、CFというよりセカンドトップなのだが、とにかくシュートが強烈だった。

 キック力だけでなく走力も技術もすばらしく、近年で似た選手を探せばジョージ・ウェア(リベリア)とディディエ・ドログバ(コートジボワール)だろうか。相手の酷いファウルにも全く動じず、堂々としていて風格もあった。

 とにかく点を取とりまくったということでは、1960年代後半~70年代に活躍し、「爆撃機」と呼ばれたゲルト・ミュラー(西ドイツ/当時)が図抜けている。

 ミュラーはどちらかと言えば小柄な部類で、体型もずんぐりしていた。プロになった当初は「太りすぎだ」と言われてダイエットに励んだ時期もあったそうだ。華麗なテクニシャンではないが、ボールを止める技術と角度をつけてゴールの隅に蹴る能力は非常に高かった。

 引退してずいぶん経ってからだが、来日して日本の子どもたちを指導したことがあり、その時に取材した。日本の子どもたちの印象を聞くと、

「ドリブルばかりでパスができない。止めるのと蹴るのは下手だ」

 と、かなり辛辣な答えが返ってきたのを覚えている。

 ミュラーは凝ったフェイントなどやらず、せいぜい切り返しぐらい。ドリブル自体あまりしなかった。しかし、ごく短い距離の動きが異常に速く、しかもピタリと止まれる。その時のボールコントロールはうまかった。

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