FIFA対プレミアの軋轢に発展も。ブラジル対アルゼンチン戦で何があったのか (2ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 アルゼンチンはこの処置に対し「そんな決まりは知らなかった」「なぜもっと早くに知らせなかった」と怒りの声をあげているが、それは嘘だ。ブラジル側はこのことを再三、AFA(アルゼンチンサッカー協会)に伝えている。

 9月3日午前8時、アルゼンチンは4人の渡航歴を、その直前に試合を行なったベネズエラとだけ記入して入国した。しかし、彼らがイングランドにいたことは明白である。彼らがホテルについた頃にはその事実が発覚しANVISAはその事実を政府の保健省に報告。アルゼンチンにもその旨をただす連絡をした。

 その夜ANVISA、CONMEBOL(南米サッカー連盟)、CBF(ブラジルサッカー連盟)、AFAそしてサンパウロ州をまじえての会議が行なわれ、ANVISAはとにかく即座に4人を隔離し、出国させるようにアルゼンチン側に求めた。しかし翌日、4人は他の選手とともに練習をしていた。この日も会議が行なわれ、アルゼンチンは4選手について特例として認めるよう要望。ブラジル保健省にも請願を出した。

 だが、その返事を待つ間も、相変わらず4選手はチームとともに過ごしていた。ついにANVISAは強制的な手段に出ることを決意。彼らは警官を伴ってホテルに向かったが、すでにアルゼンチンはスタジアムに出発した後だった。

 アルゼンチン側は「なぜ試合が始まってから中断したのだ」と抗議しているが、それに関してはANVISA長官のアレックス・カンポス氏はこう言っている。

「我々の係官はすでにキックオフ1時間前の15時にはスタジアムに到着していた。ここで4人がおとなしく指示に従ってくれたら、試合は問題なく行なわれたはずだ。しかし、アルゼンチンはあくまでも4選手を隠し続け、我々が任務を遂行するのを邪魔した。私たちはAFAの役員と話をしようとしたが、いくら待っても現れない。そのうちに試合は始まってしまった。だから無理やり中断するしかなかったのだ」

 中断後、しばらくは選手や両国サッカー協会、CONMEBOLの役員らの抗議が続いたが、ANVISAは引き下がらなかった。

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