メッシ、PSG移籍の舞台裏。なぜバルサに残れなかったのか (2ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 メッシと昔から顔なじみの私は、急遽バルセロナに飛び、彼の涙の記者会見を目の前で見た。会見後、テレビの中継も終わったところで、一番下の息子が「パパ、本当にバルセロナから引っ越ししちゃうの? 僕は嫌だよ」とメッシにしがみつくシーンには、涙が出た。

 この時点で様々な移籍先が浮上していた。マンチェスター・シティ、PSGを筆頭に、インテル・マイアミ、ユベントスなどの噂も飛びかっていた。しかし、私はバルセロナとの再契約がまだあるのではないかと踏んでいた。彼にとってバルセロナは故郷以上の存在だ。彼が会見で見せたように、本当にバルセロナを愛していたのなら、とにかく移籍期間を目いっぱい使って、バルサに帰る道を探るのではないかと思ったのだ。実際、バルセロナ側はそのための努力をするつもりだった。

 しかし、私の感傷的な予測はあっさりと裏切られてしまった。会見で流した涙も乾かぬうちに、メッシはPSGのユニホームを手に「パリに来れて嬉しい」とにこやかに笑っていた。結局、メッシも金のために動いたのだ。私は正直、がっかりした。ひどい借金があり、最近はチャンピオンズリーグ(CL)で勝つこともできず、今後の補強のめども立たないチームに、メッシはさっさと見切りをつけ、新天地に飛び立った。

 もしメッシが本当にバルセロナに残りたいと思ったなら、その方法はいくらでもあったはずだ。

 あくまでも仮の話で考えられる例としては、1年目、メッシは月に1万ユーロ(約130万円)はもらうが、それは全額チームに寄付し、実質的には無報酬でプレーする。また、クラブは5人の主要な地元のカタルーニャ人選手に、給料を2年間だけ50%に引き下げるように協力を要請する。2年目は、1年目にチームに寄付していた月1万ユーロを報酬としてもらう。そして3年目以降、チームの経済状況が良くなってきたところで、きちんとした額の年俸とボーナスをもらうようにする。

 スペインサッカー連盟の顧問弁護士によれば、「選手は無償でプレーすることは認められず、チームはスペインサッカー連盟の規定する最低賃金(707.60ユーロ/月)以上を支払う必要がある。ただし、選手とチームが合意すれば、選手は給料をチームに寄付することはできる」。  

 本人とクラブが合意できていたなら、メッシは選手人生の晩節を汚すこともなく、最後までバルセロナから愛され、永遠のレジェンドとなっただろう。

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