メッシ、PSG移籍の舞台裏。なぜバルサに残れなかったのか

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 リオネル・メッシが第二の故郷とも呼べるバルセロナを後にし、パリ・サンジェルマン(PSG)へと移籍したことは世界中を驚かせた。メッシといえばバルセロナ、バルセロナといえばメッシのはずだった。いったいどうしてこうなってしまったのか。その背景にあるのは、ひと言で言えば「金」である。

新天地パリ・サンジェルマンでプレーするリオネル・メッシ photo by AP/AFLO新天地パリ・サンジェルマンでプレーするリオネル・メッシ photo by AP/AFLOこの記事に関連する写真を見る バルセロナには途方もない額の借金があった。13億5000万ユーロ(約1730億円)。数日前にバルセロナのラ・ポルタ会長が公表した金額だ。前任のジョゼップ・マリア・バルトメウ会長のめちゃくちゃな経営で膨れ上がった負の遺産だ。

 バルセロナに借金があったからというだけで、メッシと再契約できなかったのではない。そこにはファイナンシャルフェアプレーというルールが関係してくる。このルールはチームの健全運営を促進するという名目で設けられたもので、平たく言えば、収入以上の大きな支出を認めないことで赤字を防ぐというものだ。FIFAやUEFAが定めたもの以外に、各国リーグが独自に設けた規定があり、スペインのラ・リーガはそれが他の国よりも厳しいと言われている。

 それによると、スペインのクラブは収入の約8割しか補強や選手の年俸の支出にあてることができない。背景にはラ・リーガ対ビッグクラブの戦いがある。ラ・リーガはバルセロナとレアル・マドリードの2強状態を変え、他のチームも優勝争いに参戦し盛り上がるようにしたいと思っている。そのためにはバルサとレアルの力を削ぐ必要があり、より厳しいファイナンシャルフェアプレーを設けた理由のひとつだ。

 メッシは年俸を半額にまで引き下げることに了承したが、それでもこのルールの基準を満たすことはできなかった。コロナで収入の減ったクラブにとって、半額でもメッシの給料は高すぎたのだ(もちろんメッシだけではなく、彼の次に高額取りのフィリペ・コウチーニョやアントワーヌ・グリーズマンへの支払いも重くのしかかっている)。

 こうしてメッシの電撃退団が決定した。ちなみにメッシとバルセロナが再契約不可能の事実をラ・リーガから知らされたのは、両者が契約を交わす当日のことだった。これはスーパーリーグ参加を画策するなど、ラ・リーガの方針に従わない(ラ・リーガか推し進める投資ファンドの参入にもバルセロナは反対している)バルセロナへの嫌がらせだったとも言われている。

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