2021.07.19

ユーロ優勝、革新のイタリアにあった伝統。その象徴・キエッリーニが抜かれないカラクリ

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

サッカースターの技術・戦術解剖
第67回 ジョルジョ・キエッリーニ

<最後は守備の力>

 ユーロ2020に優勝したイタリアは、従来のイメージとは違っている。イタリアと言えば「守備的」「1-0」「カテナチオ」のイメージだろう。ところが、今大会のイタリアはその意味では従来のイメージを覆していた。

キャプテンとしてイタリアをユーロ2020優勝に導いたキエッリーニ(写真左)キャプテンとしてイタリアをユーロ2020優勝に導いたキエッリーニ(写真左) この記事に関連する写真を見る  興味がなかったはずのボールポゼッションを重視し、ポジショナルプレーを導入、戦術眼とテクニックの高い選手を起用していた。イタリアというより、まるでスペインのようなプレースタイルである。

 ユーロ2008のスペイン優勝から始まった戦術的なパラダイムシフト、イタリアはその最後列にいた。ドイツやイングランドがスペインに追随しても、イタリアだけは頑としてなびかず、伝統を守る最後の砦という趣さえあった。

 そのイタリアがついに変わった。だから今回の優勝は、改革の勝利といったとらえ方をされている。

 確かに、大会トータルでイタリアは優勝に相応しいパフォーマンスだったかもしれない。プレースタイルが大きく変化したのも事実。だが、優勝にたどりつけた理由は本当にそこなのだろうか。

 準決勝と決勝はPK戦での勝利だった。この2試合で目立ったのは攻撃力よりも守備力である。GKジャンルイジ・ドンナルンマとレオナルド・ボヌッチ&ジョルジュ・キエッリーニのセンターバック(CB)コンビの堅守が負けない原動力になっていた。

 ちなみにPK勝ちは公式記録上、引き分け扱いである。思えば2006年ドイツW杯で優勝した時も、決勝のフランス戦はPK勝ちだった。

 今大会のイタリアは変貌を遂げていたが、最後の決め手になったのは伝統の守備力だったのではないか。いや、その前に従来のイタリアは、本当に世間で言われているほど守備的だったのだろうか。

<伝統と革新>

 イタリアのW杯初優勝は、1934年自国開催の時だった。万能ストライカーのジュゼッペ・メアッツァを擁し、アルゼンチンから帰化したルイス・モンティも戦術上のキープレーヤーだった。