2021.07.07

イタリア対スペインの激闘に見た欧州サッカーの神髄。PK戦勝利はイタリアへのご褒美かもしれない

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Reuters/AFLO

 ユーロ2020準々決勝までの5試合、スペインのボール支配率は1試合平均73.4%を示した。苦戦しながらも、スペインらしい戦い方でなんとか勝ち上がってきた。イタリアは対照的だった。従来とは異なる方法論で勝ち上がってきた。

 イタリアは守備的サッカーを定番としてきた国だ。その流れで欧州の頂点を極めたが、90年代後半になるとライバルが現れた。オランダサッカーの影響を受け、攻撃的なサッカーに変貌を遂げたスペインである。21世紀に入ると、守備的なサッカーにこだわるイタリアは、欧州の盟主の座をスペインに奪われることになった。

 イタリア対スペイン。お互いは守備的サッカー対攻撃的サッカーの関係で20数年間に渡り、睨み合いを続けてきた。サッカー談義をする時、何かと引き合いに出されやすい、わかりやすい対立軸を形成することになった。

 ところが、2018年にイタリア代表監督に就任したロベルト・マンチーニは違った。方向転換を図った。サイド攻撃にこだわりながらボールを保持し、その一方で、ボールを奪われるやハイプレスに転じる、文字通りの攻撃的サッカーを標榜している。

 今大会、準々決勝まで5試合のボール支配率の平均値は57.6%だ。スペインの73.4%には及ばないものの、その分、サイド攻撃にスピード感があり、攻撃的な色は、むしろ鮮明となっている。

スペインをPK戦の末に下して決勝に進出したイタリアの選手たちスペインをPK戦の末に下して決勝に進出したイタリアの選手たち この記事に関連する写真を見る  ウェンブリーで行なわれた準決勝。最大の注目点は、攻撃的サッカーを展開するのはイタリアなのか、スペインなのか、だった。

 答えはスペイン。攻めるスペイン対守るイタリア。両者は20数年来の関係そのままに対峙することになった。イタリアは自ら引いたわけではない。攻めたくても攻められない状態に陥ったのである。

 今大会、準々決勝まで活躍してきた左サイドバック(SB)、レオナルド・スピナッツォーラ(ローマ)を、負傷で欠いたことをその内的要因とすれば、外的要因は、スペインに中盤を支配されたことにある。

 スペインのルイス・エンリケ監督はこの試合、4-3-3の1トップにストライカータイプのアルバロ・モラタ(ユベントス)ではなく、それまで主にウイングを務めてきたダニ・オルモ(ライプツィヒ)を、0トップ然と構えさせた。つまり、3人だった中盤は、4人に限りなく近づいた。4-3-3を敷き、3人の中盤でオーソドックスに戦うイタリアに対し、ピッチの中央付近で数的優位な関係を築くことになった。