イングランド「負け犬魂」払拭。難攻不落のDFを武器に25年前のリベンジへ

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by AFLO

「フットボールの聖地」ウェンブリーで行なわれたユーロ2020準決勝は、地元の大声援を受けたホームのイングランドがデンマークとの接戦を制し、イングランドサッカー史上初となる決勝戦進出を成し遂げた。

 前日に行なわれた準決勝イタリア対スペインに続く延長戦となったこの試合の明暗を分けたのは、1−1で迎えた延長前半終了間際のシーンだった。

イングランドは延長戦の末に初の決勝進出を果たしたイングランドは延長戦の末に初の決勝進出を果たした 右サイドからドリブル突破を図ってボックス内に進入したイングランド代表FWラヒーム・スターリングに対し、ヨアキム・メーレとマティアス・イェンセンが挟み込むように寄せると、メーレがスターリングを倒したとして目の前で見ていたオランダ人ダニー・マッケリー主審は躊躇なくPKの判定。

 メーレの足がスターリングにかかっていたかどうかは、スロー映像で見ても微妙なところ。その後のVARチェックでオン・フィールド・レビューが行なわれなかったこと、スターリングがドリブルを開始したエリアに別のボールがピッチ内にあったことなど、敗れたデンマークにとっては不運が重なる格好となった。

 それでも、深い悲しみから這い上がり、ベスト4まで勝ち上がった今大会のデンマークの戦いぶりは、あらためて称賛に値する。エースのクリスティアン・エリクセンが一命を取り留めたことが何よりも重要だが、その後に彼らが見せたリアクションとアグレッシブかつ爽快なサッカーは、今回のユーロを語るうえでは欠かすことのできない大きなトピックになった。

 その原動力とも言えるのが、コロナ禍の昨年8月に就任したカスパー・ヒュルマン監督の采配ぶりだ。

 初戦は4−3−3だった布陣を、エリクセン不在となった2戦目(ベルギー戦)から3−4−2−1に変更すると、これが大当たり。戦況次第で4バックも使い分け、控え選手を大胆に起用しながら試合の流れを変える柔軟なベンチワークは、チームに攻撃性と勢いを生み出していた。

 この準決勝でも、中盤で劣勢を強いられていた後半67分に3枚代えを断行。結果的にその策が奏功することはなかったが、3−4−2−1から3−5−2に微修正してチームに活力を取り戻させようとする明確な狙いは見て取れた。少なくとも、守備面においては一定の効果が表れていた。

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