「冨安健洋移籍」情報の舞台裏。現地記者が明かす一筋縄ではいかない交渉 (2ページ目)

  • パオロ・フォルコリン●文 text by Paolo Forcolin
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 それならばトレードすればいいではないか。バロウはボローニャの選手となり、そのかわり、冨安はアタランタの選手となる。アタランタは差額の500万ユーロ(約6億5000万円)をボローニャに払えばいい。簡単なようだが、そうはいかない。アタランタはボローニャが冨安につけた値段は高すぎる、差額を払いたくはないと思っている。アタランタは2人の単純なトレードを望んでいる。

 しかし、ボローニャは冨安の値段を下げる気はなく、今度は別の提案をする。「我々はあなた方に冨安を提供しよう。あなた方はその対価としてバロウともうひとり別の選手、FWのサム・ラマースかロベルト・ピッコリ(アタランタが保有する選手だが今シーズンはスペツィアでプレー、よいパフォーマンスを見せた)を渡してくれ」と。

 移籍の交渉とは一筋縄ではいかない。チェスのゲームのようなもので、参加者は自分がより有利になる手を模索する。今のボローニャに強力なアタッカーが必要なのは明白だ。攻撃の中心ロドリゴ・パラシオは39歳、いつ引退してもおかしくない年齢だ。パラグアイ代表FWフェデリコ・サンタンデールは移籍しようとしている。バロウとピッコリのコンビなら、ボローニャに多くのゴールをもたらすことができるかもしれない。

 ちなみに冨安が抜けた穴の対処もボローニャは抜かりない。すでにミランのマッテオ・ガッビアとコンタクトをとっている。右SBだが、必要ならばCBもできる。つまり第二の冨安のような選手だ。

 アタランタは来シーズン、CLがあるためにハードなスケジュールをこなさなければならない。そのすべてでいい結果を出すには、レベルの高い選手を集め、守備陣を強化する必要がある。現在のアタランタの守備の中心はアルゼンチン人のクリスティアン・ロメロで、彼は今シーズンのセリエAのベストディフェンダーにも選ばれた。

 だが、逆にそのために多くのビッグクラブがロメロに興味を持ち、アタランタは彼を失う可能性が高い。その筆頭はマンチェスター・ユナイテッド。23歳のロメロに4500万ユーロ(約58億5000万円)を支払う用意があるという。アタランタが彼をユベントスから1600万ユーロ(約20億8000万円)で獲得したことを考えれば、これは最高のビジネスだ。

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