2021.06.09

「冨安健洋移籍」情報の舞台裏。現地記者が明かす一筋縄ではいかない交渉

  • パオロ・フォルコリン●文 text by Paolo Forcolin
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 イタリアでトミーの愛称で知られる冨安健洋は、今シーズンもポジティブな結果を出し、この夏、セリエAで最も"ひき"の多い選手のひとりだと言われる。多くのチームが彼を手に入れたいと思っている。

 2年前にボローニャが彼をベルギーのシント・トロイデンから獲得した時は900万ユーロ(約11億7000万円。ただし実は600万ユーロだったという噂もある)だったが、今やその市場価値は大きく跳ね上がっている。

 この事態にボローニャは困惑している。ボローニャはこれほど誠実で優秀な選手を、できることなら手放したくはない。しかし彼を売却した場合のキャピタルゲインは、中堅どころのボローニャには無視できないものだからだ。

 冨安は少なくとも2000万ユーロ(約26億円)で売れると、ボローニャは踏んでいる。彼の獲得に支払った金額の倍以上。これは決して大げさな値段ではない。冨安はこの2年間で、セリエAで十分に活躍できることを証明している。まだ若いので百戦錬磨のマリーシアこそないが、その点もシニシャ・ミハイロビッチ監督の厳しい指導の下、かなり改善が見られた。

 だが、将来有望であるとはいえ、イタリアのどのクラブがひとりのDFの選手に2000万ユーロを払うことができるのか。

U-24日本代表に加わり、U-24ガーナ代表戦に出場した冨安健洋 photo by Fujita MastoU-24日本代表に加わり、U-24ガーナ代表戦に出場した冨安健洋 photo by Fujita Masto この記事に関連する写真を見る  シーズン中にまず関心を示したのはミランだった。しかし本格的な交渉はついに始まることはなかった。なぜならミランはチェルシーのDFフィカヨ・トモリを優先したからだ。ヴェローナとも何度か話があったが、なにより強力に冨安をほしがっているのがアタランタだった。アタランタは来シーズン、リーグだけでなく再びチャンピオンズリーグ(CL)を戦う。選手の層は厚いほうがいい。冨安をほしがる動機は十分にある。

 しかし現実はもう少し複雑だ。

 アタランタは現在ボローニャに、ガンビア人FWムサ・バロウをレンタルしている。出来不出来の波がある選手だが、実力を持っていることは確かだ。ミハイロビッチはその豊富な経験から、バロウはカンピオーネになる素質を持っていると見ており、ボローニャは彼の完全移籍を望んでいる。そのためにはボローニャは1500万ユーロ(約19億5000万円)をアタランタに支払わなければならない。