柴崎岳は「フリーならジダン」の評を覆せるか。1部昇格へ正念場 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 スペインでプレーするボランチは、相手の攻撃に対して体を張り、五分五分のボールを自分のものにする仕事が求められる。特に外国人ボランチは、その球際で決して負けてはならない。まずは守備の局面で負けず、バックラインのフィルターとなって、そのうえでパスを配給し、プレーリズムを作り、攻守のバランスを取る。中盤でリーダーシップを取ることが求められるのだ。

「ガク(柴崎)の能力は高い。助っ人ボランチとして、チームが苦しい時に戦局を変えるプレーをしてほしかった。フリーなら、かつてのジダンのような優雅なプレーができるのだが......」

 デポルの関係者はそう惜しんでいたが、その点はスペインに来た時から変わっていない。

 カルタヘナ戦後、柴崎は3試合、ベンチで過ごしたが、その後は再びプレー機会を与えられるようになった。チームは3-5-2にシステムを変更し、2トップの背後の攻撃的MFとして抜擢された。トップ下のポジションで、まさに柴崎の攻撃センスを生かしたいという意図を感じさせる。そこまで期待させるサッカーセンスがあるのだ。

 しかし、まだ大きな成果を生み出すことはできていない。

 スペインで5シーズン目、多くの監督が柴崎のポテンシャルを高く評価してきた。ただ、シーズンを通して主力選手だったことはない。デポル時代にフェルナンド・バスケス監督は「どこでもできる」と言ったが、適性ポジションが見つからないのだ。

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 直近のエスパニョール戦(4月12日)の前半、柴崎は4-4-2の左サイドハーフで起用されている。キープ力を生かして起点になる機会はあったし、右に流れてのラストパスは決定機だった。しかし、スピードがあるわけではないので、サイドで崩し、裏に抜けるようなプレーは見せることができない。

 後半は、ボランチ、トップ下、左サイドなど目まぐるしくポジションを変えた。ピンポイントのクロスを送り、勤勉に帰陣もし、左サイドをドリブルで割って入った。どのポジションに入っても悪くはない。

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