「イエニスタより上」だけど地味で繊細。ポストプレーもできる超絶技巧の選手がいた (2ページ目)
フアン・カルロス・バレロン。「デポルのジダン」とは、その異名になるが、こちらの目には、ジダンよりはるかに特殊な存在に見えた。186センチの長身ながら細身。いかにも線の細い選手だった。
プレーはその分だけ繊細で、いまにも壊れそうなシルエットから紡ぎ出される技巧は、サッカー界における特別天然記念物、あるいは絶滅危惧種と言いたくなるほど、哀愁漂う圧倒的な異彩を放っていた。
バレロン見たさ。これは、筆者が日本から見て欧州大陸の最も外れに位置するスペインはガリシア地方の港町、ラ・コルーニャに足繁く通った大きな動機のひとつになっていた。
バレロンがデポルティーボにやってきたのは2000-01シーズン。ハビエル・イルレタ監督のもとで、デポルティーボがスペインリーグを初めて制した翌シーズンだった。「ミスター4-2-3-1」とは、イルレタ監督の異名だが、当時はその4-2-3-1という布陣が誕生して間もない頃で、そこで1トップ下としてプレーしたバレロンは、まさに1トップ下の走り、先駆者だった。
その後、4-2-3-1が流行るほど、1トップ下はタイプを増やしていった。FW的要素が強い1トップ下もいれば、MF的要素が強い1トップ下もいる。バレロンのタイプはといえば、典型的な後者。ひと言でいうなら視野の広い典型的なパッサーとなる。
とはいえ、イニエスタを代表とする小兵のMFとは違い、バレロンにはゴールに背を向けてプレーできる強みがあった。ポストプレーが抜群に巧かったのだ。ボールを懐深くに隠しながら、人混みをすり抜けていく動きだ。
日本人選手で似たタイプを探すなら大迫勇也(ブレーメン)、さらには鎌田大地(フランクフルト)になるが、低身長国である日本には、潜在的に存在しにくいタイプだ。
ふと、氷上でエッジの効いたステップを披露する長身のフィギュアスケーターを想起させる。立ち足をコンパスの支点のように用いて、身体を回転させるようにターンする。フィギュアのスケート靴には、ブレードの先端部分にギザギザのエッジが刻み込まれているが、バレロンのサッカーシューズにも、エッジが付随しているのではないかと疑いたくなるほど、そのステップにはキレがあった。
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