伊東純也は「マジシャン」。28歳、ベルギー3年目でキャリア最高の時 (2ページ目)

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by Getty Images

 ファン・デル・エルストが指摘するように、ふたりはポジショニングの妙で相手に対して優勢をとる。そしてショートコンビネーションで局面を打開したり、縦パスで右のオープンスペースへお互いを走らせるなど、効果的なプレーを随所に見せている。ズルテ・ワレヘム戦で伊東がヒールキックでノールックスルーパスをムニョスに出し、FWポール・オヌアチュのゴールをアシストしたシーンは圧巻だった。

 伊東とのコンビについて、ムニョスは「僕たちには言葉の壁こそあるけれど、お互いに理解し合おうという気持ちがある。僕と伊東の間には『化学反応』が生まれている」と語っている。

 ゲンクでは、右から伊東、オヌアチュ、テオ・ボンゴンダの3人がFWに並ぶ。この3トップ(もしくは伊東とボンゴンダがシャドーを務める1トップ2シャドー)はベルギーで『ゴールデン・トライアングル』と呼ばれ、相手チームから恐れられている。

 201cmの長身ストライカー、ナイジェリア代表のオヌアチュは現在得点ランキングトップの25ゴールをマークしており、ボンゴンダの12ゴール、伊東の10ゴールを足すと合計47ゴールにもなる。ゲンクの今季チーム得点数は58だから、実に81%ものゴールをこの3人によって奪っているのだ。

 エースのオヌアチュは「伊東とボンゴンダがアシストしてくれるから、僕がゴールを決めることができる」と感謝を述べている。また、ボンゴンダは伊東との仲のよさをベルギー人記者にこう語っていた。

「彼の英語はパーフェクトとは言えないけれど、僕が経験してきたなかでワーストというわけでもない。漫画のこととか、サッカーのこととか、他愛もないことを話しているんだ」

 今年1月には、伊東に『T-Ito』というニックネームが誕生した。

 ベルギーには、作家ヒド・ファン・ヘネフテンが描いた『Tito tovenaar(マジシャンのティト)』という有名な絵本がある。主人公ティトがサーカスの手品師からアドバイスや助けを借りながら、手品を成功させていく物語だ。

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