久保建英をめぐる珍現象。U―24代表招集を機に反転攻勢はなるか

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 リーガ・エスパニョーラで外国人選手が出場機会を減らした場合、その選手には容赦ない非難が浴びせられる。戦力になっていない。その一点で「罪」なのだ。

 ところが、久保建英(19歳)には面白い現象が起きている。

 今シーズンの久保は、ビジャレアルではカップ戦要員で、ウナイ・エメリ監督と戦術面で合わず、躊躇なく移籍を決断した。ヘタフェに新天地を求めたわけだが、そこでもホセ・ボルダラス監督に同じような要求を受け、なかなか定位置を奪うに至っていない。同じことを繰り返した形だ。

 しかしながら、スペインメディアは引き続き久保に「違いを見せられる」と好意的で、むしろ監督の起用法に対して懐疑的である。これだけでも久保の可能性と言えるだろう。

 U-24日本代表への招集を機会に、久保の現状を検証した。

エルチェ戦で7試合ぶりに先発出場を果たした久保建英(ヘタフェ)エルチェ戦で7試合ぶりに先発出場を果たした久保建英(ヘタフェ)「なぜ、スペインでろくにプレーしていない久保がU-24代表に選ばれるのか?」

 そんな意見もあるという。しかし、これは暴論だ。

 そもそもプレーしている舞台のレベルが高い。今シーズン、久保はビジャレアルでヨーロッパリーグを戦って結果を残しているし(ビジャレアルはベスト8に進出)、上位を争うリーグ戦でも貴重な交代のカードだった。ヘタフェ移籍直後は強いインパクトを残し、その後は先発の座を失ったものの、技術そのものが衰えたわけではない。

 3月21日のエルチェ戦でも、久保は先発でアタッカーとして存在感を示している。

 前半は2トップの一角でプレー。序盤から積極的にゴール前に入って、クロスをコントロールしたところを倒され、気勢を上げた。その後も、左からのクロスにファーポストで相手の背中を取ってヘディングで狙ったり、裏に走ってボールを呼び込み、抜群のコントロールから得意のドリブルで仕掛け、エリア内で抜け出て、敵を脅かしている。

 後半途中からは右アタッカーとしてプレー。そして60分、右サイドで相手ディフェンスと1対1になると、一瞬でマークを外して縦に抜け出て、右足でクロスを折り返す。これをFWエネス・ウナルがコントロールし、同点弾を叩き込んだ。

1 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る