バイエルンのミュラーは不思議な名選手。200ゴールを可能にした武器とは
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サッカースターの技術・戦術解剖
第50回 トーマス・ミュラー
<ゴールゲッターの才能>
父親の名前はゲルト・ミュラーだが、あのゲルト・ミュラーではない。
ミュラーという名前はドイツには多いようだ。サッカー史上最高クラスのゴールゲッターだったゲルト・ミュラーは、ニュルンベルクに入るはずが、「ミュラーはふたりもいらない」との理由で断られたそうだ。たぶんつくり話だろうが、チームにふたりぐらいミュラーがいても不思議ではないのだ。
今季バイエルンでの得点が200ゴールを超えたトーマス・ミュラー 西ドイツ代表で偉大なゲルト・ミュラーの後を継いでセンターフォワードに収まったのは、ディーター・ミュラーだった。ポジションは違うがハンジ・ミュラーという代表選手もいた。トーマス・ミュラーは、ドイツ代表では第四のミュラーになるわけだ。ゲルトという名も珍しくないので、父親がバイエルンと代表の先輩と同姓同名なのはただの偶然である。
トーマス・ミュラーは、「爆撃機」と呼ばれたゲルト・ミュラーと同様によく点を取るが、得点の仕方もわりと似ている。
ゲルト・ミュラーのゴールのほとんどは、ペナルティーエリア内のシュートだった。なぜかそこにいる。そういう点の取り方が得意。こぼれ球にミュラー、味方のシュートがポストに当たってミュラー、GKがファンブルしてミュラー......。
一方、トーマス・ミュラーは行動範囲がずっと広い。右ウイングやトップ下でプレーしていて、最前線に張りついていたゲルトとは、そこがまるで違う。ただ、ゴールの遠くから、いつのまにかゴール前に来ていて点を取る。
バイエルンではロベルト・レバンドフスキとの関係が絶妙だ。これはミュラーの得点につながっていて、レバンドフスキのゴールにもつながっている。
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