バイエルンのミュラーは不思議な名選手。200ゴールを可能にした武器とは (2ページ目)
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このふたりは、どこにいればチャンスがあるかを嗅ぎ分けている。しかし、ふたりの居場所が重なることはない。レバンドフスキが膨らんでファーサイドへ動くと、空けたスペースにミュラーが入ってくる。その逆もある。ふたりの動きは、あうんの呼吸で連動しているようで、ふたりセットでチャンスをモノにしている。
どちらも、得点もアシストもできる、ゴール前の理想的なペアだ。
<得点力が突出したチームプレーヤー>
バイエルンの主力、あるいはドイツ代表として、トーマス・ミュラーはありとあらゆるタイトルを獲ってきた。紛れもない名選手だ。ただ、あまりそういう雰囲気はない。
ボールタッチが特別に非凡といった印象はまるでない。どちらかというと下手そうにさえ見える。華麗なフェイントもなければ、唖然とするようなスピードもない。だから試合によっては存在感が希薄で、いるのかいないのかわからない時もある。
あまりテクニシャンには見えないのに、肝心の時にはピタリとボールは収まるし、ピンポイントのパスが出せて、アクロバテックなボレーシュートも計ったように決める。このあたりはゲルト・ミュラーもそうだった。装飾的なテクニックはないが、止めて蹴るというベースのところはうまいのだろう。
ただ、トーマス・ミュラーの特徴は技術よりもセンスだと思う。
ゲルト・ミュラーは、絶妙なポジショニングでよくゴールしていた。例えば、1974年ワールドカップのユーゴスラビア戦では、ウリ・ヘーネスの右からの低いクロスボールに対して、DFの背後から出てきてスライディングでボールをかっさらい、そのまま地面に寝た状態でシュートを決めている。これについて本人に聞いたことがあるのだが、答えはこうだった。
「あの状況でヘーネスがボールを持っていたら、ボールはあそこにしか来ない」
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