久保建英をめぐる珍現象。U―24代表招集を機に反転攻勢はなるか (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 貴重な攻め手となって、残留争いをするチームで勝ち点1を拾う殊勲者になった。スペイン大手スポーツ紙『アス』も、同チームでは最高の星2つ(0~3の4段階評価)をつけた。

「久保はウナルのゴールをアシスト。ピッチで違いを与え、(相手DF)ホアン・モヒカとの1対1の戦いは美しかった。危険なセンセーションを与え、最後は"新鮮な空気の入れ替え"で交代したが......」

 激賞に近いだろう。

 もっとも、久保はポジションを確約されていない。

「久保は別格の選手である。しかし試合の内容によって、違うプロフィールが求められる」

 ボルダラス監督の久保評は、決して特別なものではない。エメリ監督も似たような点を指摘していた。二人の指揮官はいわゆる"戦える選手"を好み、フィジカル、メンタルの激しさ、荒々しさを求める。久保にはその不足を感じているのだ。

 この点で久保は十字架を背負っている。彼自身、最低限のインテンシティを身につける努力を怠るべきではないが、そのサイズを大きくすることなどできない。しばしば「成長」という言葉が使われるが、物事はそれほど単純ではないだろう。たとえば、筋力を必要以上につければ、スピードは失われる。気迫に溢れすぎたプレーは、精度を失わせる。

 その中で、久保がやるべきことははっきりしている。

<どんな試合であろうと、決定的な仕事が数多くできるか>

◆中田英寿を上回る天才に起きた悲劇。リーガに「ぶっとんだ自信」で挑んだ>>

 エルチェ戦の久保は71分に交代で下がったが、その直前、気になるシーンがあった。カウンターの機会で、久保はスプリントで攻め上がる味方を追い越せたはずだが、スピードを落とし、後ろでボールを受けようとした。それはひとつの判断で、たとえばバルサのような"攻め直し"をするチームでは肯定されるが、ボルダラス・ヘタフェは"怒涛の攻め"を特徴とし、そこは前に入るべきなのだ。

 こうした部分で、久保はチームスタイルに適応する必要があるだろう。

 しかし何でもかんでも、「力強さと守備が課題」という指摘は正しくない。ない物ねだりもいいところだろう。守備はおろそかにできないが、その技術で相手を凌駕し、シーズン10点に絡めるなら「必要な選手」とされるはずで、攻撃の強度を高めるべきだろう。

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