因縁のバルサ対パリ。メッシ強奪もあり得るPSG会長の執念は実るか (2ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by Getty Images

 2度目の対戦は、その2年後。ローラン・ブラン監督時代に2試合続けて完敗してしまい、クラブとしての大きな差を見せつけられた。

 そして「3度目の正直」と意気込んで挑んだのは、ラウンド16で対戦したウナイ・エメリ監督時代の2016−2017シーズン。ところが、第1戦をホームのパルク・デ・プランスで4−0と完勝しながら、第2戦ではCL史上に残る1−6のスコアで大逆転負けを喫するという、信じがたい結末が待ち受けていた。

 バルセロナの人々の間で今もなお語り継がれる名勝負「カンプ・ノウの奇跡」は、PSGにとっては「カンプ・ノウの大惨事」として"黒歴史"になっているのだ。

 とりわけ、これまで多額のマネーをクラブに投資しながら、すべての敗北を目の当たりにしてきたアル・ケライフィ会長が負った傷は想像以上に深かった。

 そして、「打倒バルセロナ」を誓うプライド高き会長の執念が、その年の夏の移籍マーケットにおける"暴挙"を引き起こすことになる。すなわち、「カンプ・ノウの奇跡」の立役者であるネイマールと、レアル・マドリード行きも噂されていたモナコの神童キリアン・エムバペをダブルで強奪した、あの歴史的ディールである。

 ネイマール獲得に投じた資金は、サッカー史上最高額となる移籍金2億2200万ユーロ(約290億円)。さらにエムバペの獲得については、UEFAのファイナンシャル・フェアプレーを回避するために買い取り義務付きの1年ローンとし、翌年の夏に移籍金1億8000万ユーロ(約235億6000万円)を支払うという、グレーかつ強引な取引を成立させたのだった。

 ふたり分を合わせると、実に520億円以上の投資である。

 ところが、肝心のネイマール本人がその後の両クラブ間におけるトラブルの種となったことは、まさに皮肉としかいいようがない。

 2019年夏、かねてからバルセロナ復帰希望が噂されていたネイマールがクラブのフロントに直談判。これに対して怒り心頭のアル・ケライフィ会長およびカタール首長は、ネイマールの移籍金額を2億2200万ユーロ以上に設定し、結局、資金不足のバルセロナが獲得をあきらめるという結末を迎えたのである。

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