ズドンと一撃、観客震撼。中田英寿からロベカルなど強シューターの系譜 (4ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

 ローマ、サンプドリア、ラツィオ、インテル等でプレーしたシニシャ・ミハイロビッチ。パルマで1シーズン(1995-96)プレーしたフリスト・ストイチコフ。そして同シーズン、インテルでプレーしたロベルト・カルロスだ。

 想起するのはトゥルノワ・ド・フランス。1998年フランスW杯のプレ大会だ。舞台はスタッド・ジェルラン(リヨン)。1997年6月3日、対フランス戦の出来事である。前半21分、ブラジルが得たFKはゴールまで35メートルあった。そこに登場したのがロベルト・カルロスだ。

 左足で放ったスライス気味のインステップは、向かって右ポストの内側に当たってゴールに飛び込んでいった。針の穴を通すコントロールショットでありながら、おそらく140キロは超えていた。スライスも掛かっていた。こう言ってはなんだが、その場で目撃したことを自慢したくなる一撃だった。

 だが、筆者が実際に目撃したブラジル代表選手でナンバー1の強シューターはロベルト・カルロスかと問われると、ノーと答える。該当者は1994年アメリカW杯で左SBとしてスタメンを飾ったブランコだ。

 その7月9日、ダラスのコットン・ボウルで行なわれた準々決勝対オランダ戦といえば、大会一の名勝負として記憶されるが、2-2で迎えた後半36分、決勝ゴールとなるFKを打ち込んだのがブランコだった。

 そのポスト右隅に吸い込まれるように飛び込んだ左足の一撃は、言い方は悪いが、悪魔的であり殺人的。見ていて恐ろしくなるキックだった。

 筆者はその翌年、ブラジルに渡り、フラメンゴでプレーしていたブランコの、その恐怖の左足キックを再度、拝んでいる。放った場所はハーフウェイライン付近。距離にして50メートルはあった。ズドン! 相手のゴールネットは予想外の一撃に慌てるように激しく揺れた。

 今日のサッカー界に欠けている強シューターという異能の素材。その復活を願わずにはいられない。

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