ラップトップ世代の代表格。若くても経験豊富なナーゲルスマンの才能 (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

 準決勝では、かつてアウグスブルクで上司だったトーマス・トゥヘル監督のパリ・サンジェルマンに敗れたが、ナーゲルスマンはCL準決勝で指揮を執った史上最も若い監督だった。

<監督の才能がある>

 28歳でブンデスリーガの監督になったのは、確かに驚くほど早い。ただ、ナーゲルスマンにはそれ以前に8年間もの指導者としての経験があった。引退したのが20歳と早かったために監督デビューも早くなっただけで、いきなりブンデスリーガの監督になったわけではない。

 スマートフォンなどのテクノロジーを使うのも、便利だからそうしているだけだろう。

「ラップトップ世代」にとっては特別なことではない。若い世代でなく、例えばマルセロ・ビエルサのようなベテラン監督でも、タブレットを練習に使っている。使える物を使っているだけで、それがナーゲルスマンの監督としての特徴と言うほどではない。

 ナーゲルスマンが若く、新しい知識を持った監督なのは間違いない。ただ、本質は監督としての才能があるということだ。これは年齢にあまり関係がない。ある人にはあり、ない人にはない。

 よく混同されがちだが、選手としての才能と、監督の才能は別物である。

 選手、監督の両方で成功したヨハン・クライフ、ジネディーヌ・ジダン、ジョゼップ・グアルディオラ、ディディエ・デシャンなどの例はあるとはいえ、アリゴ・サッキやモウリーニョなど、選手としての実績はほとんどないが監督で成功しているケースは多く、こちらのほうが多数派である。

 選手経験は大いに助けにはなるが、選手の才能と監督の才能はまったく別で、例外的に何人かはたまたま両方持っていたにすぎない。

 監督の仕事は多岐にわたるが、1つに絞れば、それはチームを強くすることだ。チームを強くするには個々の能力を引き出し、伸ばし、それを正しく組み合わせて集団としての能力を上げること。同時に対戦相手とどう戦うかの戦略、選手の士気を高める能力も必要だ。根幹にあるのは、アイデアと伝達力だろうか。

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