グアルディオラに異常事態発生。発明家は次の材料を手に入れられるか (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

 初期はアンカーのフィリップ・ラームをセンターバック(CB)の間に下ろし、インサイドハーフのトニ・クロースはアンカーへと、アラバ、ラーム、クロースの3人を移動させる手の込んだ形状変化だった。最終的には右のSBも「偽」になっている。

 しかし、シティの場合、ポジション移動があるのはカンセロだけだ。DFの3人も左方向へずれて3バックを形成するが、横移動だけで大きな変化ではない。

 さらにアラバとカンセロが違うのは、アラバがさらにポジションを上げてウイングやインサイドハーフとして振る舞ったのに対して、カンセロはボランチへの移動で終わっていることだ。

 アラバとカンセロのキャラクターの違いでもあるが、それ以上に期待されている役割が違うのだと思う。そして、新機軸がカンセロだけというところに、今季の苦しさが凝縮されている。

<おとなしい新機軸>

 カンセロのポジション移動の目的は、中盤の増員。もう1つは、ロドリとカンセロをボランチに置くことでの守備の強化である。

 グアルディオラ監督がビルドアップでポジションを動かす目的は、常にボールの確保なので、1つめの理由は容易に理解できる。問題は2つめ、守備強化だ。

 ペップが新手を繰り出す時は、ことごとく攻撃の増強が目的だった。今回もポゼッション強化の攻撃目的はあるけれども、それ以上の攻撃面での狙いが見当たらない。2ボランチという選択も比較的珍しく、3バックとは言ってもバルサではセルヒオ・ブスケツのひとりで中盤の底を任せていた。

 DF陣の負傷、ダビド・シルバの移籍、フェルナンジーニョの欠場など、いくつかの理由はあるにしても、カンセロの起用方法に積極的な意気込みは感じられない。ロドリの1ボランチでは厳しいだろうという、現実的な問題解決の意味合いが強いのだ。

 緻密な監督だが、この手の水漏れ防止策にしても攻撃的な意義を付けてきたこれまでの手際からすると、ペップらしくない。

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