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ベンゲルの告白。「私やファーガソンが
やっていた仕事はもうなくなった」 (3ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper
  • 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 2018年5月、ついにアーセナルはベンゲルに退任を求めた。「クラブを去る用意はできていなかった」と、ベンゲルは自伝に書いている。

「私にとってアーセナルは、人生そのものだった。それがなくなった後は、とても寂しく、とてもつらい時間になった」

 退任した後のベンゲルは、エミレーツ・スタジアムで試合を一度も見ていない。

「今はクラブ幹部の誰とも連絡をとっていない。だから、このままでいいのだろうと思っている」

 アーセナルが声をかけようとしていないことに、ベンゲルは傷ついているのだろうか。

「うん、そう、『hurt(痛い)』という感じかな。私はトレーニングセンターを建て、新しいスタジアムの建設にもかかわった。いつでもクラブに帰れると思いがちだが、人生はそういうものではない。時代は変わり、私がいないほうがやりやすいのだろう」

 だとすれば、ベンゲルのもとで選手としてプレーし、現在はアーセナルの監督であるミケル・アルテタまでが彼の助言を求めていないことになる。しかしベンゲルは自伝に、アーセナルはアルテタのもとで「このクラブらしい価値、魂、スタイルを取り戻せる」と書いている。この一文は、ベンゲルが退任した直後に監督に就任し、短命政権に終わったウナイ・エメリを、軽く批判しているようにも読める。

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