2020.11.19

シメオネが選手に伝える現役時代の自らの資質「泥が見えたら飛び込む」

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

サッカー名将列伝
第23回 ディエゴ・シメオネ

革新的な戦術や魅力的なサッカー、無類の勝負強さで、見る者を熱くさせてきた、サッカー界の名将の仕事を紹介する。今回はアトレティコ・マドリードで10シーズン目を迎えたディエゴ・シメオネ監督。数々の名言と、徹底した現実主義のサッカーで結果を残してきた。これまでの堅い守備に加え、今シーズンは攻撃に力を入れたスタイルで、頂点を目指している様子。そこには常に現実を見て対応する彼の哲学がある。

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<攻撃的なアトレティコ>

 アトレティコ・マドリードが攻撃的なチームになっている。国内リーグは5勝2分で無敗。直近2試合はオサスナに3-1、カディスに4-0だ。

アトレティコ・マドリードを率いて10シーズン目になる、シメオネ監督 第9節で対戦したカディスは、そこまで3試合連続無失点と、堅守で好調を維持していたのだが、アトレティコは圧倒的な攻撃力であっさり陥落させている。

 この試合の攻撃は、まるでフットサルかバスケットボールのようだった。攻撃時のフォーメーションは3-4-3に近いが、それよりも選手の特徴を組み合わせたオーダーメイドなのかもしれない。

 自陣にステファン・サビッチ、ホセ・ヒメネスのふたりを残して、残りのフィールドプレーヤー8人が敵陣に入る。右はキーラン・トリッピアーが幅をとり、そこから得意のクロスボールを繰り出すのは相変わらずだが、左にサウール・ニゲスが張りっぱなしなのは意外だった。

 変幻自在がウリのサウールに、タッチラインを踏ませる意図はいまひとつわからないが、ほかにいなかったからだろうか。中央へ入るのはコケとときどき入れ替わる程度。3バックの左であろうマリオ・エルモソは攻撃で前へ出ていくので、エルモソがタッチライン際に前進した時も、サウールは幅とり役から解放される。

 エクトル・エレーラはピボーテ(中盤後方)の位置。イタリア風ならレジスタ(司令塔)の役割だ。中盤中央の守備はエレーラとコケが担当しているが、コケは攻撃時に遊軍的に動き回り、エレーラはセンターに居残る。