日本人がCL決勝出場に最も近づいた日。バイエルン、本拠地優勝ならず (4ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 赤木真二●写真 photo by Akagi Shinji

 後半38分、トーマス・ミュラーが先制点を挙げた瞬間、アリアンツ・アレーナは爆発的な歓声に包まれた。当時の監督ユップ・ハインケスは、残り3分となった段で、197センチのベルギー代表CB、ダニエル・ファン・ブイテンをピッチに送り込み、守りを固めた。

 ところがその直後、CKからディディエ・ドログバにヘディングシュートを叩き込まれ、同点とされる。長身CBを入れ、守りを固めたにもかかわらず、である。延長PKにもつれ込んだ試合は、5人目のキッカーとして登場したバスティアン・シュバインシュタイガーが左ポストに当ててしまう。その直後に、チェルシーの5人目、ドログバが左に決めると、アリアンツ・アレーナはすっかりチェルシーのホームと化していた。

 表彰式に臨むチェルシーのメンバーが、筆者が座る記者席の直ぐ脇の階段を通過していった。敗れたバイエルンの面々がそれに続く。そしてその最後に、頭にヘアバンドをした宇佐美貴史の姿があった。いきなり真横に現れたので、どう対処すべきか慌てた記憶がある。

 その時は何も声を掛けなかったのだが、いまさらながら惜しいことをしたと思う。CL決勝のピッチに立った日本人選手は、いまだ現れていないのだから。

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