2020.11.13

名将リッピが駆使した「新種のカテナチオ」には1−0がよく似合う

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by AFLO

サッカー名将列伝
第22回 マルチェロ・リッピ

革新的な戦術や魅力的なサッカー、無類の勝負強さで、見る者を熱くさせてきた、サッカー界の名将の仕事を紹介する。今回はユベントスやイタリア代表で一時代を築いたマルチェロ・リッピ監督。大舞台では苦戦もあったが、僅差の勝負を制して多くのタイトルを獲得した。葉巻をくわえたダンディな風貌、イタリア人らしい名将の軌跡を追う。

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<国内は無敵。CLは準優勝3回>

「もういいだろう。十分やった」

 マルチェロ・リッピが監督引退を発表したのが昨年11月。最後に率いたチームは中国代表だった。指導者としてのキャリアは37年におよぶ。

ユベントスやイタリア代表で数々のタイトルを獲得した、マルチェロ・リッピ監督 名門ユベントスでセリエA優勝5回、イタリア代表を率いて2006年ワールドカップを獲った。チャンピオンズリーグ(CL)とワールドカップの両方を制した最初の監督だ(2番目はビセンテ・デル・ボスケ)。

 最初のユーベ時代にリーグ優勝3回、CL優勝。ジャンルカ・ビアリ、ファブリツィオ・ラバネッリ、アレッサンドロ・デル・ピエロ(以上イタリア)の強力3トップを擁した1995-96シーズンは、CL決勝でアヤックスをPK戦の末に破っている。

 その次の1996-97シーズンもユベントスはCL決勝へ進んだ。メンバーは入れ替わっていて、決勝はジネディーヌ・ジダン(フランス)、クリスティアン・ヴィエリ(イタリア)、アレン・ボクシッチ(クロアチア)が前線の3枚。デル・ピエロは交代出場だった。この時はドルトムントに敗れたのだが、優勝したシーズンよりもむしろこのユーベのほうが強力な印象があったくらいだ。

 1997-98のCLも決勝に進出している。実に3シーズン連続である。当時のユーベはそれも不思議でないヨーロッパのトップに君臨する強豪だった。しかし、この決勝もレアル・マドリードに敗れて優勝できなかった。

 リッピ監督とユベントスといえば、非常に勝負強い印象がある。圧倒的な点差で勝つわけではないが、1-0でも必ず勝つ手堅さがウリだったはずだ。ところがユベントスほどCL決勝で負けているチームもない。