「久保建英をなぜ使わないのか」。指揮官がスタメン起用をためらう理由 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 マッカビ戦の得点シーン、久保は右サイドで2人のディフェンスを相手にボールを運んで外側にずらし、角度を作っている。そしてファーポストでマークを外したバッカに、得意の左足でクロスを合わせている。完璧なタイミング、コースだった。コロンビア代表FWバッカと並び、最高の3つ星(0~3の4段階)を付けられたが、当然の評価だろう。

「Omnipresente.(どこにでも顔を出す)」

 スペイン大手スポーツ紙『マルカ』も、「濡れたピッチは氷のリンクのようだったはずだが、芸術的プレーを見せた。コンビネーションもよく、ゴール近くは彼のゾーンだった」と久保のプレーを絶賛している。久保について、否定的な声はほとんど聞かれない。

 しかし、ウナイ・エメリ監督は守備の規律を重んじるだけに、久保の高い技術を認めながらも、主力とすることにためらいが見られる。

 たとえば第8節バジャドリード戦では、久保は後半途中から出場し、中盤で味方が奪ったボールをセンターサークル付近で受け、鮮やかなショートカウンターを発動させている。一度、バッカに預け、再び走り込んで、エリア内で受け、ダイレクトで左足シュート。GKにブロックされたが、出色のセンスだった。

 その一方、終了間際にCKからの流れで、久保は自陣エリア内でボールコントロール、もしくはクリアに失敗している。相手ボールになって、シュートまで持ち込まれていた。危険なシーンだった。

 エメリは後者のような綻びを嫌う。計算し尽くした守備があって、それを遂行することが選手起用のベースになっている。失点しない、負けないことが出発点なのだ。

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 それでも久保はその戦術の中で、自分の役割を果たしつつある。1対1の強度が上がって、ポジションを下げてコースを封鎖し、挟み込むような守備も見せるようになった。何より、カウンターの起点になることで、攻めることによって守りを助けられる。彼の存在が、守っているチームの"よりどころ"になり始めているのだ。

 エメリが久保を主力とみなすタイミングは、それほど先ではないだろう。

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