久保建英の活躍に現地紙最高評価。それでもベンチから怒声が飛んだ理由 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 そして後半になって、56分にも久保は左からのCKを直接、フアン・フォイトの頭に合わせ、3点目を演出している。左足で蹴ったボールは、相手ディフェンスを幻惑させるように曲がって、落ちていた。対処が難しいキックだったはずだ。

 試合後、ヒーローインタビューに応えていたように、主役の輝きだった。スペイン大手スポーツ紙『アス』が、0~3の4段階で最高の3を付けたのも至極当然だろう。

◆「20年前、史上最強と称された日本代表を知っているか」>>

 もっとも、その立場は劇的には変わらないだろう。攻撃力の高さとひらめきは群を抜き、バルセロナ、レアル・マドリードの選手と比べてもそん色はない。ただ、エメリが求めているのは、守備の強度と献身なのである。攻から守に切り替わるところで、しっかり下がってポジションを取り、チームとして数的有利で守れるか。

「ベンチからは、ポジション取りの指示の声が止むことはなかったです。特に守備に切り替わるときには」

 この試合を撮影していたカメラマンは、エメリの指示の声を聞いていたという。前半、同点に追いつかれた時には、トップ下にいた久保が前に残ってしまい、ボランチが正面から攻撃を浴びて機能しなくなったことで、ベンチからの"叱責"は激しくなった。

「90分間、あまりにたくさんのことが起こっている。結局、我々のほうに有利に働いたが」

 試合後、エメリはそう振り返っている。

「(流れを)与えていないのに、かなり苦しめられた。勝利したことはよかったが、我々は自らを省み、然るべき場面での強度について修正しなければならない。選手にプレー時間を与えるための試合でもあったわけだが、今後は能力を引き上げ、改善できるはずだ」

 戦術家を自負し、ソリッドな守備構築に定評のある指揮官にとって、2-0から追いつかれ、5-3でようやく勝つ試合の流れは、効率性に欠け、不満が残るものだったろう。あくまでチームへのコメントだが、久保に対して向けられたもののようでもあった。

 試合後、久保はテレビのインタビューにスペイン語で堂々と答えている。

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