スペインの夢を粉砕。小国ポルトガルの
知恵が光る今季のCL集中開催地 (2ページ目)
ジョゼ・アルバラーデは少し歩く。といっても、距離にして100メートル弱。地下鉄黄色線(別名ひまわり線)と緑線(カラベル線)の乗換駅であるカンポ・グランデ駅を降りた目の前にスタジアムは立っている。リスボン市内のどの地下鉄駅から乗車しても30分以内でスタジアムに到着可能な、絶好の立地にある。
カンポ・グランデ駅前では、試合前、ポルトガルサポーターとスペインサポーターが入り乱れるように、互いにシュプレヒコールを挙げていた。赤と緑のポルトガルに対し、スペインは赤と黄色。識別しにくい配色であることも混乱に拍車が掛かる原因だった。
両者がいがみ合っている場所はないか。デジカメを手に群衆の中に割って入った。そして対峙する最前線に辿り着くや、必死にシャッターを押した。カメラマンというわけでもないのに。
サッカー観戦における最先端の現場とはこの場所を指す。だが殺気はほぼゼロだった。喧嘩腰で相手に向かっていく人はいない。それぞれは、タオルマフラーをかざしながら笑顔で向き合っていた。拍子抜けするぐらい平和的な空気に包まれていた。
相手に対し、腹に一物を抱えている量が多いのはポルトガルの方だ。しかし彼らは好戦的ではない。「南米に進出した際に、スペイン人が現地で殺戮をくり返したのに対し、ポルトガル人は問題を平和的に解決しようとした」。ポルトガル人と話をすると、そこのところを必ず強調する。
「スペイン人は憎たらしい存在ですが、ユーロ2004ではお客さんです。それはそれ、これはこれと割り切ってもてなすのがポルトガル人の嗜みだと思います」とは、入ったレストランのご主人の言葉だ。
ポルトガルは、ここまで2戦して1勝1敗(勝ち点3)。スペインは1勝1分(勝ち点4)。ギリシャ(1勝1分)と三つ巴の関係になっていた。この試合に敗れた方は、グループリーグ落ちする可能性が高かった。
ジョゼ・アルバラーデの収容人員は5万95人で、当日の観衆は4万7491人だった。
設計を担当したのはトーマス・タベイラさん。このユーロ2004では、このジョゼ・アルバラーデの他に、レイリアのマガリャエス・ベッソアと、アベイロのムニシパル・デ・アベイロの計3つのスタジアムの設計を担当した、高名な建築家だ。
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