岡崎慎司が明かす、VARで7点取り消しもなぜポジティブでいられたのか (4ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

「当時は正直、そんなことよりもコロナの感染が酷い状況で試合をしている場合ではなくて、自分の調子はどうでもよかった。どちらかといえば4点取れていたからいいか、という感じでした」

 およそ3カ月に及んだ中断期間で家族の健康など、不安に思うことが多々あるなかで、岡崎自身はサッカー選手としてはなにを感じていたのだろうか。

「中断期間で感じたのは、試合という目標があることがこんなにも大きかったのかと。1週間を過ごすなかで土日に試合がない日々を送っていると、何をしにスペインに来てんねやろって、そんなことばかり考えていました。リーグ再開後は試合に向かっていけることの有り難みをどの選手も感じていたと思います」

 リーグ再開後、ウエスカは6勝2分3敗で4位からの逆転優勝を果たした。再開後に岡崎が奪った4ゴールはどれも確実にタイトルをたぐり寄せた。ただ、中断前と比べうまくいかないプレーが多かったという。

「選手たちのコンディションはバラバラで、スケジュールが本当にタイトななかでうまくいかないことが多くなるのは当たり前なんですよね。ウエスカは形にこだわったサッカーをしてきたんですけど、それができなくなっていました。

 だから、大雑把でもいいから自分がなんとかするという意識に変わりましたね。あらゆる状況が変化したなかで、自分が以前のサッカーのイメージに縛られていたらうまくいかない。だから今まで積み上げたいいイメージを捨てようと、そう腹をくくったら結果が出始めました」

 そうして掴んだ2部優勝と1部昇格。来季はついに目標とした1部の舞台での戦いが待っている。

「来季は多くの選手が入れ替わるのは間違いない。リーグでの戦いだけではなく、新たにポジション争いも始まりますね。またどんな状況でも受け入れるつもりだし、その覚悟はもうできています」

 その緊張感とともに、やはり胸の高鳴りを抑えることはできない。

「34歳でずっと憧れていたスペインでプレーできる喜びやモチベーションは、当然2部の時よりも大きいと思います。やっとここでプレーできるという喜びに勝るものはない。試合に出るたびにその喜びを感じて、プレーで表現できたらいいなと思います」

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