冨安健洋「ジョーカー」、吉田麻也「先生」。守備の国イタリアで高評価 (3ページ目)

  • 利根川晶子●文 text by Tonegawa Akiko
  • photo by AFP/AFLO

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 ミハイロビッチの存在も彼を大いに勇気づけてくれたようだ。ミハイロビッチは冨安が移籍した直後に白血病が発覚。しばらくは入院し治療に当たっていたが、今はベンチに復活している。入院中にも試合にかけつけるなど、その不屈の精神は選手たちにも大きな影響をもたらした。

「誰もが彼のために勝ちたいと思った」と、冨安は言う。

 そしてこんなエピソードを紹介している。

「遠征試合の帰り、チーム全員がバスでそのまま彼の入院している病院へ行き、病室の下でチャントを歌ったんだ。すばらしかった。皆がひとつになった瞬間だった。ボローニャというのはすばらしいチームだと思った」

 一方、今年1月、守備にケガ人が続出し、早急に強力なDFを求めていたサンプドリアが冬のメルカートの最終日に獲得したのが吉田麻也だ。

 サンプドリアを率いるクラウディオ・ラニエリ監督は、テクニカル・ディレクターから「日本人の吉田を獲得しようと思う」と言われた時、最初は誰かわからず怪訝な顔をしたという。だが、かつてプレミア時代に何度も対戦したサウサンプトンの吉田であるとわかると、即OKを出したという逸話がある。

 ラニエリの期待を裏切らず、吉田はシーズン後半を不動のレギュラーとしてプレーした。吉田の加入時にはB落ちの危険性もあったサンプドリアだが、4試合を残して無事A残留を確定。イタリアのどのメディアもその理由を「1月の補強が大きかった」としている。

 特にカリアリ戦、ユベントス戦での吉田の活躍はすばらしく、地元メディアは彼に10点満点中7という高評価をつけた。これはクリスティアーノ・ロナウドと同じ評価である。『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は「吉田、なんという安定感だ!」という見出しで称えた。
 
 吉田はドリアーノ(サンプドリアサポーター)の心もがっちりと掴んでいる。移籍直後のインタビューでは「チャニンチャニン(少しずつ)」というジェノバ弁を使って話題となったが、最終節終了後のチームの公式チャンネルでは、細かい文法にまで気を使った見事なイタリア語で受け答えをし、称賛の声が上がっている。

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