2020.06.02

安部裕葵がバルサで日本人の宿願
達成なるか。来季カンプノウに立つ可能性

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 中島大介●写真 photo by Nakashima Daisuke

リーガに挑んだ日本人(16)

 2019年10月27日。バルセロナ市の郊外にあるヨハン・クライフスタジアムでは、交代出場した日本代表MF安部裕葵が決然とした表情でボールを追っていた。

 安部が所属するバルサBは、名門バルセロナのセカンドチームにあたる。バルサでは下部組織全体が「ラ・マシア」と呼ばれるが、憧れのトップチームに昇格するための最後の関門であり、登竜門である。かつて、リオネル・メッシやアンドレス・イニエスタも在籍した。

 この日、リーガ・エスパニョーラ2部B(実質3部)に所属するバルサBは、サバデルと対戦している。最近まで2部にいたチームで、昇格を争う直接対決という触れ込みで、シーズン最高の4092人の観客を集めていた。サバデルのファンも数多く駆けつけ、試合前からスタンドは盛り上がった。

 交代でピッチに入った安部はボールを持ち上がり、左サイドで1人をするりとかわす。軽やかな抜き方に、会場の各所でため息が洩れる。サッカー通を唸らせる技量だった。

 すると、安部にボールが集まり始める。右サイドを崩した後、折り返しのクロスに対し、安部はエリア内のインサイドに入り、強烈な右足ダイレクトボレーでゴールを狙う。GKに弾かれるが、どっと拍手が湧いた。

 青とえんじのユニフォームで躍動する日本人は現実に存在し、夢の中ではない――。

 2019年7月、スペインのスポーツ紙『エル・ムンド・デポルティーボ』は、バルサが鹿島アントラーズの安部と契約を結んだことを伝えている。年俸は110万ユーロ(約1億4000万円)で、3年契約プラス2年延長のオプション付き。

「ホセ・マリア・バケーロ(バルサ強化部長)は個人的に、久保建英より先に安部を追っていた。今年の1月からだ」

 記事は獲得の経緯を説明していた。レアル・マドリードに久保を奪われたのは強化部の失態だが、安部に関心を抱いていたのは間違いない。

 そして安部はバルサBで、着実に試合経験を積み重ねている。今年2月のプラッツ戦でハムストリングを痛めるまで、20試合に出場。16試合が先発で、4得点を記録している。1年目としては、十分に及第点が与えられるだろう。