W杯史に残る名勝負を目撃した、
BGMが世界一美しいスタジアム

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyma Shigeki
  • 中島大介●写真 photo by Nakashima Daisuke

追憶の欧州スタジアム紀行(9)
ラモン・サンチェス・ピスフアン(セビージャ)

 身体が伸びきったゴムのようにユルユルと弛緩する。リオデジャネイロをはじめとするブラジルの各都市やタイのバンコク、沖縄の那覇空港に到着した際にも襲われる感覚だが、スペインはアンダルシアのセビージャも、負けていない。「昼寝をしたくなる世界の街ランキング」なるものが存在すれば上位にランクインしそうな、いい意味で緊張感に欠けることおびただしい街である。

 夏はとにかく暑い。空は黒みが掛かるような濃厚な蒼。カンカン照りだ。初めて訪れたのは1982年スペインW杯の期間中だが、街中に設置された温度計の「42」という表示を見て、恐れおののいたことを覚えている。いまにも熱射病に襲われそうな数字だが、日陰に一歩入れば、そこは別世界。涼やかな風が心地よく吹き抜ける。カラッとしているので、それこそ昼寝にはうってつけだ。

ラモン・サンチェス・ピスフアンというスタジアム名はセビージャの元会長の名に因むラモン・サンチェス・ピスフアンというスタジアム名はセビージャの元会長の名に因む セビージャの中央駅にあたるサンタ・フスタ駅には、マドリードのアトーチャ駅からスペイン式新幹線AVEを利用すれば、およそ2時間強で到着する。

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