ユーロ1年延期即決の裏事情。UEFAが迅速に動いた背景を読み解く (3ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by AFLO

 延期による損失を覚悟のうえで、それでも中止や強行開催よりかは経済的打撃を最小限に食い止められる――。そう考えたからこそ、UEFAは延期という迅速かつ明確な結論に辿りつくことができたのだろう。

 それは、今回の会議に参加したステークホルダーたちにとっても同じだ。

「我々サッカー界は、ここ数十年のなかで初めて、本当の意味での経済危機に直面している。各クラブの銀行口座には余分な蓄えなど一切ないし、予算がどのように運用されているかも、彼らが常にギリギリの状態にあることも、十分に理解している。

 もし、我々が彼らのキャッシュフローを安定化させるために素早く動かなければ、数週間以内にも選手やスタッフが大量に解雇されることになるだろう」

 今回の決定に際し、FIFProのヨナス・ベア=ホフマン事務局長はそのように本音を吐露したが、もしユーロ2020の強行開催によって日程的に各国リーグとヨーロッパカップが完結できない事態に追い込まれてしまえば、それこそ中小のクラブは存続の危機に立たされてしまい、その影響は選手やスタッフにも及ぶことになってしまう。

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