2020.01.27

イブラヒモビッチが初めて買った家は
約5億円。サッカー選手の住宅事情

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper
  • 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

【サイモン・クーパーのフットボール・オンライン】
サッカー選手はどんな家に住んでいるのか(前編)

 想像してみてほしい。あなたは20代の若者。もちろん、家など持ったことがない。女友達はたくさんいるが、結婚はしていない。

 そんなあなたが突然、知らない町に引っ越すことになる。あなたには引っ越し先で家を(あるいは数軒の家を)買うだけの金がある。その家に9カ月しかいないのか、あるいは一生住むことになるのか見当もつかない。家のゲートを車で通り抜けて外出するたびに、あなたは近くに集まっている人々から憧れと好奇の視線を向けられる──。

 移籍市場がオープンしているこの1月、こんな経験をしているフットボール選手がたくさんいる。彼らは住宅の問題にどう対応しているのだろう。世界のトップクラスの選手たちは、どうやって家を選び、どんなところに住んでいるのか。

1月の移籍でミランに復帰したズラタン・イブラヒモビッチ photo by AFLO フットボール選手の住居費の推移を長期にわたって見てみると、ちょうどスポーツのテレビ放映権の高騰を示すグラフと重なる。僕は1970年代に中流層の住む地域で育ったが、すぐ近所に有名なフットボール選手が住んでいた。彼の家はわが家より小さなテラスハウスだった。

 90年代になると、テレビ放映権による金がフットボール界に流れ込みはじめ、選手たちの住居費は上がった。それでも最初は限度があった。僕は2001年に、チェルシーと契約したばかりのある選手と話をしたことがある。彼はチェルシーの本拠地に近いロンドンの高級住宅地に、賃貸マンションを探していた。

「家賃、いくらだと思う? きっと見当もつかないよ」と、彼はあきれ顔で言った。ロンドンっ子は家賃の話題にはいつも真剣になるから、僕はちょっと考えて言った。

「週に1000ポンド(当時のレートで約17万円)とか?」

 フットボール選手は驚いたようだった。

「そうなんだ、本当に週1000ポンドもするんだ!」

 その時、僕は、チェルシーの選手にとっても、ロンドンは住むのに高い場所なのだとわかり、自分のことを考えるべきだと思った。いま僕がパリに住んでいるのは、この選手のおかげでもある。