6年かけて1部のレギュラーに。ファン・ウェルメスケルケン際の生き方 (2ページ目)

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • photo by Pro Shots/AFLO

 際がオランダにやってきたのは2013年だった。ヴァンフォーレ甲府の下部組織で育ち、大学進学も考えたが、18歳で父のルーツを辿ることを選択した。ただし、この時はプロ契約ではなく、オランダ2部のドルトレヒトとアマチュア契約でプレーした。プロ契約を結んだのは2015年のこと。プロとして1シーズンを終えると、リオ五輪代表候補に名を連ねたが、当時、現地で取材をした筆者の目には、正直言って五輪代表には及ばないレベルに見えた。

 だが、この時の経験は刺激になってもいるのだろう。2017年には同じオランダ2部のカンブール・レーワルデンに移籍。2シーズン目には2部のベストイレブンにも選出され、満を持して1部ズヴォレへの移籍を決めた。

 ズヴォレでは3バックの左でプレーし、攻守にわたる要として機能している。フレキシブルなチームの戦術もあって、攻撃時には組み立てに参加したり、自ら持ち上がることもある。落ち着き払ったプレーぶりは、リオ五輪前の頃の自信なさげな様子とは雲泥の差だ。

 オランダに渡ってから6年。力を蓄えて、ようやく1部で花開いたかに見えるが、2部での経験は現在にどう生きているのだろうか。

「1部は、あまりミスを犯せない高いレベルなので、ひとつひとつのプレーに正確性が求められます。でも、2部というのはドリブルの部分だったり、ディフェンスの部分だったり、チャレンジできることがたくさんある。そのおかげで経験というのが積み上げられましたし、そこで培った個の経験などは、本当に自信になっています」

 ミスをしても取り返せる。そういう環境のなかでチャレンジを繰り返してきたことで、しだいに余裕を持ってプレーできるようになった。その経験のおかげでズヴォレでも自信を持ってプレーができている。

「今はどこのチームとやっても何も感じませんし、それこそデ・カイプ(フェイエノールトの本拠地)でやっても、いい意味でも悪い意味でも本当に何も感じない。そこは選手としてひと皮むけたというか、このレベルでやるのにふさわしい自分になれているという実感があります」

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