安部裕葵、スペイン初ゴール。バルサの昇格サバイバルで必要なこと (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Quality Sport Images/AFLO

 それでも、安部が「FALSO 9」を任されるのには理由がある。

 チーム事情は別にして、バルサの選手はどのポジションでも適応し、アドバンテージを取れる能力が求められる。たとえばコルネジャ戦で、右のインサイドハーフで先発したモンチュは、後半になってアンカーに入り、終盤には右サイドバックとなって、アディショナルタイムのPKを呼び込むロングパスを送っている。ちなみにPKを獲得したのは、前線にポジションを取っていたセンターバックだった。

 バルサは伝統的にポジションに囚われない。クライフが提唱したトータルフットボールの精神である。たとえば、サイドバックにもプレーメーカーと同じような資質を求める。事実、トップではセルジ・ロベルトがサイドバックとMFを両方こなしている。

「(安部)裕葵はサイドバックでの起用もある」

 入団したばかりの頃、クラブ関係者は洩らしたというが、バルサでは珍しくない発想と言えるだろう。複数のポジションを戦術的に習得することで、プレーヤーとして進化できる。いわゆるトータルフットボーラーになれる。

 安部は現在、その進化のプロセスにある。いまはストレスも多いだろう。コルネジャ戦でも、せっかくマークを外していたのにパスがこず、大きく手を広げて不満をあらわにしていた。しかし、先発で起用されていることが、評価されている証拠だろう。後半、安部に代わってトップに入った選手は,2017-18シーズン、UEFAユースリーグ(ユース年代のチャンピオンズリーグ)で優勝した時のメンバーであり、生粋のセンターフォワードである。

 実はバルサBの先発の半数が当時のメンバーだ。つまり、安部は古参のメンバーを押しのけ、実力で先発の座をつかんでいるのだ。

 とはいえ、バルサのトップチーム昇格を目標とするなら、現状に満足はできない。

 コルネジャ戦で得点に絡んだ21歳のカルレス・ペレスは今季、トップチームで悪くないプレーをしても、レギュラーには程遠い。同じく天才と言われてきたプッチもすでに20歳で、「トップでチャンスがないなら、(冬にバルサを)出ていくしかない」と自ら洩らすなど、微妙な立場に置かれている。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る