競争激化のPSV。堂安律が「カウボーイ」になるために必要なストーリー (3ページ目)

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by Getty Images

『デ・トッパー』というビッグゲームで起用されなかった事実は、PSV内における堂安の現状を示しているのかもしれない。だが、今はヨーロッパリーグ(EL)と並行して戦い、過密日程が控えていること、今後は攻撃の目先を変える必要が出てくること、そしてイハターレンとガクポがフルシーズンをプレーした経験がないことなどから、堂安にも出場機会は回ってくるだろう。

 PSVは今回、ELのスポルティング戦(3-2でPSVの勝利)から中2日でアヤックス戦を迎えた。そのスポルティング戦でファン・ボメル監督は、ブルマを温存するために78分から堂安をピッチに入れている。そして堂安は、惜しいシュートを放ってアピールしていた。

 サッカーの世界というのは、一瞬で状況が変わる。アヤックス戦のガクポはピッチに入って最初のプレーでアシストし、チームに貴重な勝ち点1をもたらした。ガクポをストライカーに置くシステムは、今後もPSVの「プランB」として重宝されるに違いない。そんな転機を、堂安もPSVで作りたいところだ。

 PSV対アヤックスの激戦を見終わり、筆者の脳裏にはアントワープに移籍した三好康児の名前がよぎった。

 8月中旬、アントワープの地元紙『ガゼット・ファン・アントウェルペン』は三好の移籍を小さく報じただけだった。一方、移籍市場終盤で獲得したFWケビン・ミララス(前エバートン)は元ベルギー代表ということもあり、見開きで報道されていた。

 当初、三好とミララスのチーム内ステータスの差は、露骨なまでに明らかだった。ミララスは移籍直後のズルテ・ワレヘム戦(9月1日)で途中から出場したが、2週間も前に加入した三好は、「まだ彼のプレーをよくわかってないから、試合で試せない」(ラースロー・ボローニ監督)と、ベンチ入りすら許されなかった。

 しかし、三好は国際マッチウィーク期間中の練習試合でゴールを決めてアピールし、9月15日のアンデルレヒト戦(2-1でアントワープの勝利)でベンチ入り。さらには83分にベルギーデビューを果たすと、交代から5分後にベルギーの名門チームを破る決勝ゴールを決めたのだ。

3 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る