競争激化のPSV。堂安律が「カウボーイ」になるために必要なストーリー

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by Getty Images

『デ・トッパー』と呼ばれるPSV対アヤックスを翌日に控え、アヤックスのエリック・テン・ハーフ監督は「PSVは6人でブロックを作り、『4人のカウボーイ』で攻撃を仕掛けてくる」と語った。

 今季のPSVは、中盤の創造力とチーム全体の守備力に欠点を抱えている。しかし、21歳のFWステーフェン・ベルフワイン、20歳のFWドニエル・マレン、17歳のMFモハメド・イハターレン、24歳のFWブルマ(あるいは20歳のFWコーディ・ガクポ)によるカウボーイたちの迫力ある攻撃は、チームの弱点をカモフラージュするだけのクオリティを備えている。

アヤックス戦で堂安律に出場機会は訪れなかったアヤックス戦で堂安律に出場機会は訪れなかった 9月22日に行なわれた『デ・トッパー』は、38分にアヤックスがPSVの守備を崩しきってクインシー・プロメスがフリーでボレーを打つなど、とくに前半は試合の主導権を握っているように見えた。だが、PSVも2本、3本のシンプルなパスをつないだだけで「4人のカウボーイ」がアヤックスのゴール前に襲いかかり、得点まであとひと息のところまで迫った。

 0-0の均衡を破ったのは63分、アヤックスのほうだった。ドゥシャン・タディッチがゴール前の密集地でマーカーを外してギャップを作り、最後はプロメスが冷静にゴール左隅にシュートを決めた。

「アヤックスにゴールを許し、何かを変える必要があった」。そう判断したPSVのマルク・ファン・ボメル監督は、76分に一気に2枚替えを実行する。

 なかでも、中盤をコントロースするヨリト・ヘンドリクスに代えてガクポを投入し、「5人のカウボーイ」にしたのは効いた。ガクポはピッチに入ってから1分後、アヤックス守備陣の背後に絶妙のスルーパスを送り、マレンの同点ゴールをアシストしたのだ。

 1-1になった直後はアヤックスが少しパニックになったものの、やがて試合は落ち着きを取り戻し、両チームの我慢比べとなった。PSVはあと1枚、アヤックスはあと2枚、交代のカードを残していた。だが、「先に動いたら、やられる」という雰囲気を察知し、両チームの指揮官は動けなくなってしまった。

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