2019.09.25

チェルシーに補強禁止も何のその。
若手台頭で「災い転じて福となす」

  • 田嶋コウスケ●取材・文 text by Tajima Kosuke
  • photo by AFLO

 試合後のスタンフォード・ブリッジは、温かい拍手に包まれていた。

 9月22日に行なわれたプレミアリーグ第6節、チェルシー対リバプール戦。フランク・ランパード監督率いるチェルシーはホームで1-2の敗戦を喫したが、サポーターは指揮官と選手たちに声援を送っていた。

エースの座に君臨している21歳のタミー・エイブラハム しかも、5日前に行なわれたバレンシアとのチャンピオンズリーグ(CL)グループステージ第1節も、0-1で敗戦。ホームで2連敗を喫したものの、スタンドからブーイングは聞こえてこなかった。

 しかも、ここまでホームで公式戦4試合を戦い、2分2敗でいまだ勝利なし。リーグ6試合を終えて喫した計13失点は、プレミアリーグ開始以降のチェルシーでは最多の数字だ。

 それでも、サポーターはランパード政権に温かい眼差しを向ける。「今季は我慢と辛抱の1年」と、ファンも相当な覚悟ができているのだろう。

 チェルシーがFIFAから「移籍期間における2度の補強禁止処分」を科せられたのは、今年2月のこと(※)。その後、マウリツィオ・サッリ監督(現ユベントス)が退団し、チームの絶対的エースであるエデン・アザールもレアル・マドリードに飛び立った。

※18歳未満の選手の国際移籍に関する規定に違反したとして、今年2月にFIFAの規律委員会がチェルシーに補強禁止の処分を言い渡した。2019年夏と2020年冬の移籍市場で新規の選手登録が禁じられ、チェルシーが次に新たな選手を獲得できるのは2020年夏となる。

 ランパードがチェルシーの監督に就任したのは、そんなタイミングだった。昨シーズンに指揮を執ったダービー・カウンティ(英2部)での1年しか監督経験のないランパードにとって、これ以上ないと言っていいほど難しい舵取りを迫られることになった。

 ランパード政権が志向するのは、ダイナミックさとアグレッシブさが共存するサッカーだ。ポゼッションにも重きを置いているが、チャンスと見れば縦に速い攻撃を仕掛け、ロングフィードも積極的に取り入れている。パスサッカーを信条としたサッリ前政権に比べると、攻撃のスピードギアがひとつ、ふたつほど上がった印象だ。